まず、細川のこれまでの経歴を説明しよう。
明秀学園日立高時代に、茨城県の高校野球本塁打記録を更新する63本塁打を放った右投げ右打ちの外野手。右方向に推定140メートル弾を放つなど、飛ばす力は規格外だった。
また、中学時代にやり投げで全国2位になったこともある強肩の持ち主で、高校時代は投手としても最速146キロをマーク。この鉄砲肩はもちろん外野守備でも生きる武器だ。
ちなみに、昨年秋に発売された本誌『野球太郎 No.020 ドラフト直前号』では、巻頭カラーページの「2016ドラフト候補名鑑101名」で細川を紹介。ドラフト後に発売された『野球太郎 No.021 2016ドラフト総決算&2017大展望号』でも、DeNAのドラフト結果における「会心の指名」としてクローズアップしている。
今となっては、「よく5位まで残っていた」と感じるが、「高卒×野手×ドラフト5位=未来の強打者」の方程式に照らし合わせて、これから挙げる名選手の名を見れば、逆に「5位でよかった。成功の方程式に乗っている!」と感じていただけることだろう。
■江藤智(関東高→広島5位/1988年)
本塁打王2回、打点王1回、ベストナイン7回、ゴールデン・グラブ賞1回。高卒ドラフト5位の指名の打者として、最高峰の成績を残したのが江藤智(元広島ほか)だ。
1年目に2軍で鍛えられた後、2年目には1軍で初本塁打を打って大器の片鱗を見せるなど、右肩上がりの成長曲線を描いた。5年目でレギュラーを奪取し、初タイトル(本塁打王/34本塁打)を獲得。
プレースタイルを見ても、理想的な成長度合いを見ても、細川が一番お手本にするべき選手といえるだろう。
■新庄剛志(西日本短大付高→阪神5位/1989年)
「トラのプリンス」からメジャーリーグへ羽ばたき、最後は北の大地を「日本ハム色」に染めた立役者も、振り返ってみると高卒5位指名でのプロ入りだった。
ビッグタイトルには縁がなかった新庄だったが、華麗な守備や走塁のほか、オールスターゲームでのホームスチール、敬遠球を打ってサヨナラタイムリーなど予想だにしないプレーで野球ファンのハートをわしづかみ。「超」がつくほどの人気者となった。
細川は、順調に成長すれば何らかのタイトルは獲りそうだ。しかしその上で、新庄のような記憶に残り、後世に語り継がれるようなプレーを見せてくれることにも期待したい。
■畠山和洋(専大北上高→ヤクルト5位/2000年)
■中島裕之(伊丹北高→西武5位/2000年)
(※中島の現在の登録名は「宏之」、所属はオリックス)
先述した2選手は引退しているが、現役では畠山和洋と中島裕之がドラ5の大成選手にあたる。
畠山は専大北上高時代に甲子園に出場。高卒でプロ入り後、33歳で初タイトル(打点王/105打点)と遅咲きの戴冠だった。
一方、中島は、高校時代は大きな実績はなかったものの、潜在能力を買われてプロの門をくぐり、4年目でレギュラーを獲得。2度の西武日本一に貢献した。
ちなみに畠山と中島は、2002年のイースタン・リーグの失策数1位・2位コンビでもある(中島が25失策、畠山が19失策)。そんな高卒下位指名ルーキーの彼らがここまで大きく育ったのは、エラーしても巻き返すチャンスをチームが与えてくれたからだろう。
DeNA首脳陣も大きな心で、細川を育ててほしい。
このようにタイトルホルダーだけでなく、「SHINJO」という稀代のスーパースターまでも名を連ねる「ドラフト5位指名の野手」軍団。
投手や即戦力の大学生、社会人選手を優先しがちなドラフトにおいて、下位指名が高卒野手を獲得しやすい「落としどころ」的な順位になっている……という面もあるだろうが、細川が現れたことで、今後は5位がいっそう気になる順位になるに違いない。
また、今回紹介した4名の「ドラフト5位大成選手」は、全員が右打者。細川も右打者であることを踏まえると、細川のブレイクは約束されているようにも思えてくる。
文=森田真悟(もりた・しんご)