FA宣言した選手達の移籍先が決まり、オフシーズンも落ち着いてきた。ここからの話題は新外国人選手の獲得と主力選手たちの契約更改といったところだろうか。
さて、このオフにも選手達が発した言葉のなかには、生活において役立ちそうなものもいくつかあった。そんな名言を紹介したい。
このオフに国内FA権を行使したソフトバンク・福田秀平がロッテ入りを決断した。規定打席に到達したことのない野手としては異例の人気となった福田。ロッテ入りの決め手となった理由の一つに、自身が若手だった頃の指導者でもある鳥越裕介コーチの存在があったという。
そんな福田は自身のブログでソフトバンク関係者への感謝、今回の経緯、鳥越コーチの存在やスカウトとの話、ファンへのメッセージを詳細に記している。ロッテからの評価を聞いいたうえで、福田が思いを綴った一文がある。
「チャレンジしたいという気持ちが芽生えていきました」
今シーズンまで所属していたソフトバンクにおいて、福田はレギュラーとしての扱いを受けていなかった。外野、内野ともに守れ、そして俊足。しかし故障がちだったということもあり、サブの一番手といった存在だったのである。
しかし今回、FA宣言したことで提示されたソフトバンクの条件は悪くなかったはずだ。また、引退後の待遇も考慮されるだろう。それをすべて投げ売ってでも新天地でのプレーを選んだのである。
その後にはこう続く。
「引退後の長い人生をトータルで考えた時に新しい環境に身を置き努力することで、より一層の自分の成長が期待できるのではないかと思い、決断しました」
福田は昨年のオフにFA移籍した浅村栄斗(西武→楽天)や丸佳浩(広島→巨人)に比べると実績的には見劣りする。また移籍先のロッテでレギュラーを保証されているわけでもない。
それでも、チャレンジする思い、そして自分の成長への期待をもって決断したのである。
プロ野球選手に限らず、世間で働く社会人でもこういった状況はあるのではないだろうか。独立や転職で勝負したいけど…。他からもいいお声がけを頂いているけど、今の環境を捨てる勇気がない。
そんなときには福田のメッセージを思い出したい。迷いを決断へと変えてくれるのではないだろうか。
中日の大島洋平がFA権を行使せず、3年契約を締結し残留を選択した。現在、大島は34歳。この年齢からの3年契約は実質的に生涯中日でのプレーを望んでいることに等しい。
これまで通算1442安打を放っており、名球会入りの条件でもある2000本まであと558本。現実的に手が届くところまで迫っている。これに対し大島はチームの先輩でもある立浪和義氏と荒木雅博コーチの名前を挙げ、このチームで達成したかったことを述べている。
そして最後にこんな力強い言葉で締めくくった。
「あとはやるだけ」
やるだけ、という言葉は口に出すのは簡単だが、実際にやり遂げるのは難しいものである。
プロ野球選手に限らず、社会人、いや人であれば目標や決めたことに対して、やるだけと言うことは多い。しかし、実際にやり切る人は多くないだろう。ダイエットや貯金、禁煙など継続できない人が多いのは周知の事実だ。
複数年契約を締結した以上、大島は全力で目標に立ち向かっていくことは間違いない。もちろん、三日坊主なんてことはない。達成できるかはもちろんわからないが、最後まで諦めることはしないはず。
何かを決める時、大島の言葉を頭に思い浮かべ自身の決意をより強固なものにしたい。
11月24日に行われたDeNAのファンフェスタで荒波翔の引退セレモニーが行われた。荒波は昨シーズンにDeNAを退団。今シーズンはメキシカンリーグでプレーを続けていた。しかし、8月に現役引退を発表。去年まで所属していたDeNAにおいてセレモニーが開催される運びとなった。
そのなかで荒波は涙ながらにこう言った。
「諦めずに挑戦したからこの世界に入れた」
荒波は高卒でも大卒でもプロ入りできず、社会人でも解禁年には指名されていない。高校、大学、社会人とカテゴリーが上がっていくにつれて、諦めざるを得ないことに気づく選手も多いなか、荒波は諦めなかった。だからこそプロ入りすることができたのである。
夢を諦めないこと。その重要性を引退セレモニーで荒波が教えてくれた。
文=勝田聡(かつた・さとし)