【この記事の読みどころ】
・あまり報道される機会がないアメリカ・マイナーリーグを紹介
・やりがいあるGM業も、チケットもぎりに売り子に何役もこなす!?
・イチローやマー君に敬意を示す将来のメジャーリーガー
1998年公開のアメリカ映画、『メジャーリーグ3』(Major League: Back to the Minors)をご存じだろうか。マイナーリーグの試合、練習内容、人間関係をコメディタッチに描いた映画で、技術的にも精神的にも未熟な選手達が成長していく物語が軽快かつ爽快である。実際にはあまり報道されないマイナーリーグを生で見て、肌で感じてみたくルーキーリーグを訪れた。
モンタナ州グレートフォールズ。人口約6万人の小さな田舎町にシカゴ・ホワイトソックス傘下のルーキー球団、グレートフォールズ・ボイジャーズがある。私が取材した6月20日はボイジャーズのホームゲームのオープニングデーということもあり多くの球場関係者が所狭しと動き回っていた。
そんな忙しい合間をぬってスコット・リーズナーGMにマイナーリーグ球団運営の難しさについて話を聞いた。
「我々はマイナー球団とはいえ、メジャー球団と同様のエンターテイメント性が求められています。ただ、メジャー球団と大きく違うのはスタッフの人数が大幅に少ないところです。球場に足を運んでくれたすべてのお客さんに満足してもらえるよう毎試合努力しているのですが、いかんせんスタッフの人数に限りがあるので一人で何役もこなさなくてはなりません。
あと、その年にもよりますが毎年3人から6人くらいの選手がシーズン中にシングルAなどのチームに昇格していきます。シーズン中に選手を失うのは悲しいことですが、選手にとってはいいことですね」
そう話してくれたリーズナーGM。気温26度の晴天の下、時には大きいテーブルや飲み物を自ら運んだり、売店やチケットカウンターの売り子を指導したり試合開始まで休むことなく動き回っていた。最後に、「こんなに素晴らしい仕事は他にないよ」と笑顔で話してくれた。
選手に目を向けてみると、ボイジャーズの開幕ロースターは31人。そのほとんどが2014年か2015年のドラフトで指名され、1991年以降に生まれた若手プレーヤーで構成されている。近くで選手の顔を見ると幼さの残る好青年ばかりだ。
試合前の練習も真剣そのもの。ボールを使う練習の前にはコンディショニングコーチの指導の下、入念なウォーミングアップとストレッチを行う。キャッチボール、シートノックとみんなで声を出して行う練習は、日本の高校野球の試合前練習を思い起こさせる。
試合前、ジェイク・ジャービス二塁手とディラン・バーロー投手に少しだけ話を聞いた。
「今日は10時半に起きたから朝ごはんは食べていないんだ。地元に彼女がいるけど、野球に集中しているからさみしくはないよ。もちろん夢はメジャーでプレーすること。俺の中ではイチロー(マーリンズ)が一番さ」
そう語るジャービスは2014年ドラフト10巡目に指名された期待の20歳だ。私が取材した日は3安打の猛打賞。その後も好調を維持し、6月末現在で打率.424でリーグ2位、打点14はリーグトップと堂々の成績を収めている。
「俺もメジャーで投げるのが目標さ。マサヒロ・タナカは素晴らしいピッチャーだね」
一方のバーローは今年6月のドラフトで指名され、開幕直前の6月16日に契約したばかりの正真正銘のルーキー右腕。ここまで1試合の救援登板にとどまっているが、今後の活躍が期待されている。
今日見た選手の中からメジャーリーガーが誕生すると思うとわくわくせずにはいられない。