4月9日(日本時間10日)のオリオールズ戦で本拠地・ヤンキースタジアムでのデビューを果たした田中将大。2回に先制の3ランを喫したが、その後は無失点に抑え、結果は7回を投げ被安打7、10奪三振、1四球、3失点。リリーフ陣が打たれ、勝ち負けはつかなかったものの、序盤に失点しながら、途中でしっかりと修正し、デビュー戦に続いて試合を作ったことを地元メディアは好意的に報じた。
ESPNの音声サイトではオールスター出場8度を誇る、ジョン・スモルツ(元ブレーブスほか)が田中に賛美のコメントを贈った。
「間違いない。彼は素晴らしい投手だよ。昨年24勝0敗だろ? どこのリーグでマークした記録かなんて関係ない素晴らしい数字。彼はバッターを打ち取る術をしっかりともっている。そして今の環境に既に適応し、ヤンキースの大きな戦力になっている。これからもどんどんよくなっていく一方じゃないかな」
スポーツ系オンラインメディアの「Bleacher report」も「3失点を喫したとはいえ相手は昨年、アリーグでホームラン数、得点ともにトップ10に入った強力打線のオリオールズとブルージェイズ。2戦連続で序盤の失点を見事に修正し、7回3失点で試合を作ったことに驚いた」と絶賛し、「すでにタナカは今年のヤンキースのエースなのかもしれない」という見出しを掲載。
「33歳のサバシアには衰えがみられ、クロダは昨年の後半にもたついた投球を見せた。ノバの今年の初登板はお粗末な結果となった。タナカは3番手と報じた向きもあったが、実際は彼が既にエースなんじゃないのか?」という論調を展開した。
「ヤンキースのエースは誰か?」
「2戦を投げ終えたタナカをどう評価する?」
というテーマに対するコメントがBleacher reportのサイト掲示板に記されていたので抜粋して紹介する。
「タナカの投球は印象的だったよ。序盤の失敗をすぐに修正できるんだから。シーズンが終わった時には18勝してるよ」
「彼の持っている球、そして制球力はぼくにとっては既に十分印象的だよ」
「シーズンが終わるころにはタナカがエースになっているような気がする」
「エースの称号を与えるのはまだ早いが、今のところ彼の投球には好感を持っている。精神力が強く、スプリットもいやらしい」
そんな好意的なコメントが並ぶ一方で、「試合を全部見たけどそんなに印象的な投球ではなかった。10三振は奪ったけど、しっかりと捉えられた当たりも多かったし、守備に助けられたケースもいくつかあった」といった「そう簡単に認めないぞ」といわんばかりの空気を醸し出すコメントも見受けられる。
しかし、そんな意見をかき消すかのように
「印象的なピッチングじゃなかったっていうけど、それはあなたの期待値がずれてるからじゃないの?」
「完璧を求めることは非現実的な期待値だよ。ネガティブじゃなく、もう少しポジティブに見てやれよ」
「序盤に失投があったけど、21アウト中10個の奪三振は見事。守備に助けられたっていうけど、とらえられた打球をさばくのだって野手の仕事だよ?」
といった温かい意見も多数。「こんなばかばかしい金額で契約したんだからエースにならなきゃおかしいだろうがよ」といった皮肉めいたコメントがもっと多いのかと予想していたのだが、実際はごくわずかだった。
「評価するにはまだ日が浅すぎる」といった内容のコメント目立った。
「シーズン序盤は投手が有利なことを忘れてはいけないよ? 特に初対戦では投手が有利。しかもタナカは相手バッターのデータを把握してるけど、バッターたちはタナカの日本時代のデータしか用意できないし、それはそのまま役に立つとは思えないからね。タナカのことはシーズンがもう少し進んだ頃に判断したほうがいいんじゃないかな」
「たった二度の先発機会で、ピッチャーの評価などできるはずがない。バッターたちはタナカのボールを初めて見ている状態なわけだからな。先発数が増え、対戦機会が増え、バッターにタナカのデータがある程度蓄積するまでは判断なんかできない。もう少し様子を見てみよう。答えは時間が教えてくれるよ」
彼らが言うように、議論を進め、客観的に判断するにはもう少し時間が必要なのかもしれない。
文=服部健太郎(ハリケン)/1967年生まれ、兵庫県出身。幼少期をアメリカ・オレゴン州で過ごした元商社マン。2児の父で少年野球チームのコーチをしていたその経験をもとにつづった「野球育児入門」を『週刊野球太郎』で連載。堪能な英語力を生かした外国人選手取材と技術系取材を得意とする実力派。