活躍の場は突然にやってきた。チームメイトのオコエ瑠偉が親知らずの治療で帰国。その代役として7日にイースタン選抜に合流した八百板は、出場数わずか8試合で5試合連続安打。猛打賞は3回と一躍その名を轟かせたのだ。この猛打賞の数は、打率.556のオリックス・吉田正尚、同.379の阪神・横田慎太郎と並び、NPBから派遣された野手27人中、最多である。
八百板は2014年のドラフト育成1位で、福島の聖光学院高から楽天入り。高い身体能力とバットコントロールのうまさは高校時代から評価されていた。
同年夏の甲子園では、15打数8安打でチーム8強入りに貢献。筆者在住の長野県代表・佐久長聖高と激突した2回戦を、よく覚えている。リードオフマンとしてセンター前ヒットで出塁。すかさず捕手悪送球を誘う二盗を仕掛けて一気に三塁進むと、犠飛でホームに帰還。俊足好打のセンスを披露した。
高卒2年目の今季、イースタン・リーグで多くの経験を積んだ。出場数は43試合から70試合に増え、打席数も95打席から201打席に倍増。打率は.230から.262に改善された。また、選球眼のよさを発揮し、安打以外の出塁率を示す「IsoD」はリーグ平均の.073を上まわる.093を記録。着実に力をつけて臨んだのが先のアジア・ウインターリーグ(AWB)だった。
台湾では持ち味のコンパクトな振りでミートする打撃に加え、180センチ76キロという細身からは想像しにくいパンチ力を爆発させている。12安打中、長打は5本。12月11日のヨーロッパ選抜戦で放ったホームランは逆方向に運ぶ大当たりに。14日の中華台北トレーニングチーム戦で放った三塁打は、背走するライト頭上を軽く越え、ウオーニングゾーンに着弾する大飛球だった。
楽天の1軍が降参した変則タイプにも、八百板はしっかりと適応した。今季の交流戦、プロ初登板・初先発の青柳晃洋(阪神)に、楽天はプロ初勝利を献上していた。青柳の左打者被打率は.224。楽天のみならず、各チームの1軍の左打者の多くが悩まされた変則右腕だ。
ウエスタン選抜の一員として今回のアジア・ウインターリーグ(AWB)に参加し、最優秀投手に選ばれた青柳だが、八百板は2打数2安打と攻略。そのうち1本は左中間へ打ち返す二塁打だった。
現在、八百板はチームの中で唯一の22歳以下の左打ち外野手。次世代を担う貴重な逸材だ。台湾でつちかった経験を、勝負の年になる育成3年目の2017年につなげてほしい!
文=柴川友次
NHK大河「真田丸」で盛り上がった信州上田在住。真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドに見える楽天応援の野球ブロガー。各種記録や指標等で楽天の魅力や特徴を定点観測するブログや有料メルマガ、noteを運営の傍ら、ネットメディアにも寄稿。