阪神を変えてくれるはず! と期待が高かった金本知憲新監督。そのキャッチフレーズとしてキャンプ前からメディアで頻出したのがこの「超変革」。ここから派生し、「超〜」の見出しが『デイリースポーツ』中心に多かったのはいうまでもない。
もちろん、阪神公式ページにも「超変革Webマガジン」なる特集ページが組まれ、「超変革」にまつわる選手の意気込みなどを聞いて盛りあげ続けた。
結果としてペナント順位はまさかの4位。一方で、新人・高山俊を初め、北條史也、原口文仁ら若手の台頭が目立ったのも確か。「超変革」が本当に意味のあったキャッチフレーズだったのかどうかは、来年以降も含めて考えた方がいいだろう。そのときにはもう、忘れられた言葉になっているかもしれないが。
今季から導入された、本塁クロスプレーにおけるコリジョン(衝突)ルール。キャンプ中から、「これは問題になるぞ」「絶対にもめるぞ」と騒がれ、その不安がものの見事に的中した、という意味において、これほど情けないルール変更もないのではなかろうか。
コリジョンで揉めるたびにメディアが取り上げ、ファンも紛糾。あるスポーツ紙は「もうコリゴリジョン」とお得意のダジャレで選手、ファンの不満を代弁していたのが印象深い。
案の定というか、後半戦からは新ルールが適用。その結果、大きなトラブルは大幅に減った。その柔軟な対応を評価しつつも、シーズン中に解釈が変わっていいのか? という新たな問題も提起した。6月14日の広島対西武における「サヨナラ・コリジョン」に至ってはそんな映画のタイトルありそう、ということまで含めて味わい深い言葉だったのは間違いない。
広島・新井貴浩の2000本安打達成直前の4月23日、「まさかあのアライさんが…。」と書かれたTシャツを広島ナインが着て激励(?)したことが話題となった。
ドラフト6位という低評価から叩き上げでここまでの高みに辿り着いたこと。後輩からもいじられる先輩・アライさんとしての側面が垣間見える点など、このワンフレーズだけでさまざまなことが読み取れるのがすばらしい。発案者が黒田博樹という点もまた味わい深い。今季の好調カープを象徴するシーンとしても外すことはできないだろう。
新人選手の活躍が多かった2016年。成績だけでなく、言葉でもファンを虜にしたのがDeNAの今永昇太だ。開幕当初はいいピッチングをしても打線の援護に恵まれず4連敗。その間も、「負けた投手の名前は残らない」「勝てる投手がいい投手」と、打てない打線を責めるのではなく、勝ち切れない自分の弱さについて味のあるコメント。
だからこそ、5月6日にやっと手にしたプロ初勝利の際に出た言葉「過去の自分に勝つことができた」はファンの心を鷲掴み。あの達川光男も「色々新人のヒロイン聞きましたけど、物凄い頭良いピッチャーですね!」「流行語大賞になるんじゃないですか」と絶賛した。
終わってみれば8勝9敗。来季以降、新エースとして更なる成績・数字が求められるのはもちろん、深いコメント力でDeNAの屋台骨を支える存在になってほしい。
今年、大ブレイクした広島・鈴木誠也。「神ってる」での流行語大賞に期待がかかるが、厳密にいえばこの言葉、緒方孝市監督の口から生まれ、そこから世間に浸透していったもの。鈴木本人の言葉で盛んにメディアを賑わせたのは、むしろ「最高でーす」ではないだろうか。
2試合連続でのサヨナラ弾、というまさに神懸ったプレーで呼ばれた6月18日のヒーローインタビューを「最高でーす」のワンフレーズだけで乗り切った鈴木。以降、すっかり「最高でーす」が彼の決め台詞になってしまった。が、元をただせば巨人・阿部慎之助のお馴染みのフレーズであることは野球ファンならご存じの通り。来季はぜひ、阿部にシーズンを通して活躍してもらい、本家「最高でーす」を響かせてほしい。
今回はこの5つの言葉について。6月以降の言葉については<下半期編>でまとめたい。
文=オグマナオト