プロ野球界では11月に入り、多くの選手たちの去就が明らかになりつつある。阪神に6年間在籍したマット・マートンも、どうやらチームを去ることが濃厚な情勢だ。
阪神ファンが神と崇めるあのランディ・バースは、マートンと同じく阪神で6年間プレーし通算743安打。三冠王に2度輝き、日本一も経験しているバースの存在感は絶大だが、日本での安打数はマートンに遠く及ばない。
今季にしても、打率.276は、マートンの過去6年間の中で下から2番目の成績だったが、それでもチーム内では、規定打席に達している選手の中で鳥谷敬(打率.2813)、福留孝介(同.2808)に次ぐ3番目。セ・リーグ全体でも9位なのである。
セ・リーグの外国人の中でも、打率は中日のルナ(.292)、DeNAのロペス(.291)に次ぐ数字。悪い結果と言われて、これなのだから、新たにこのレベルの選手を探してくるのはそう簡単ではないだろう。
そして、気になる人間性については、かつてチームメイトとしてマートンとの4年間プレーした阪神OBの桧山進次郎氏が、自身の著書『待つ心、瞬間の力』(廣済堂出版刊)の中でこう語っている。
「本当にまじめで研究熱心。そして日本を愛してくれている。性格はいくらか気分屋のところもあるが、彼の場合は顔を見ればその日の機嫌がすぐわかるので、対応はそれほど難しくない」
決して理解不可能な人間ではなさそうだ。
また、西武の秋山翔吾も、今年の10月に年間最多安打記録を更新した際、それまでの記録保持者だったマートンから祝福のメールが届いたことを明かした。そういう粋なことをできる心の広さも持ち合わせているのだ。
マートンは、日本での現役続行を熱望しているようで、この先、他球団からのオファーを持つことになる。たしかに年俸(今季推定4.5億円)はネックになるだろうが、そこは出来高部分を厚くするなど、手立てもあるはず。
これだけの実績があり、年齢も34歳。メンタル面をうまくフォローできるようなチームなら、まだまだ活躍できるだろう。「移籍先決定!」の一報を待ちたい。
文=藤山剣(ふじやま・けん)