日本シリーズ4連覇を目指すソフトバンクはこのオフシーズン、バレンティンを獲得した。プロ野球ファンなら知らぬ者はいない大砲であるバレンティンは、ヤクルトでの9年間で288本塁打を放っており、その実力は誰しもが認めるところだろう。
今年で36歳となるが、昨シーズンも打率.280(410打数115安打)、33本塁打、93打点を記録しており、まだまだ力は衰えていない。そんなバレンティンは今シーズンから日本人選手扱いとなるが、ソフトバンクでどのような起用法となるのだろうか。
執筆時点では、まだ対外試合が行われておらず、デスパイネ、グラシアルらキューバ勢もまだキャンプに合流していない。そのなかでバレンティンはレフトでノックを受けており、軽快な動きを見せている。捕球、送球が特別うまいわけではないが、どちらも無難にこなしていた。
その様子を見た村松有人外野守備走塁コーチは「思ったより、いい球を投げられるし、しっかり動けている」と評価している。
指名打者制度のないヤクルトでは、怠慢と取られかねないプレーもたしかにあったが、それでも9年間プレーしてきた実績がある。不安はあるにせよ、目も当てられないというほどではなさそうだ。
昨シーズンのソフトバンクの左翼は、グラシアル(93試合)、デスパイネ(10試合)、長谷川勇也(10試合)がスタメンで起用された上位3人。一方で指名打者はデスパイネ(116試合)、柳田悠岐(4試合)、内川聖一(4試合)が同じくスタメンで起用された上位3人となる。
そこで今シーズンはグラシアル、デスパイネと左翼、指名打者をうまく回していく形が予想される。もしくは、グラシアルは右翼、一塁、ポストシーズンで守った三塁に就き、3人を同時に起用することもできる。
3人がラインナップに並べば超強力打線となる。さらにはケガがなければ30本塁打は軽々突破しそうな柳田悠岐、30代後半にさしかかっても2年連続30本を記録した松田宣浩もいる。30本塁打カルテットどころかクインテットも夢ではない。
バレンティンの能力・実績は折り紙つき。しかし、その力を発揮できるかどうかは、また別の話になってくる。ヤクルト時代も気持ちの浮き沈みが激しく、打席での雰囲気や守備時の動きに露骨に現れていた。
しかし、自身がリスペクトしている青木宣親が復帰してからは、そういった態度もほぼなかったと言っていい。やはり、お目付け役になる存在がいるといないでは違うのだろう。
ソフトバンクでは王貞治会長という球界の“トップ・オブ・トップ”がいる。バレンティンも王会長に惚れ込んでおり「とても尊敬している」と入団会見でもコメントしているほど。その王会長の前で怠慢プレーはできないだろう。
また、グラウンドレベルではバレンティンより年上で相応の実績を持つ松田宣浩と内川聖一がいる。彼らが、バレンティンとうまくコミュニケーションを取ることができれば心配はいらないだろう。さらにはヤクルト時代のチームメートである川島慶三もいる。川島から背番号「4」を譲り受けたことに恩義を感じているとの報道もあった。
王会長というレジェンド、年上の松田、内川の主力、そしてかつてのチームメートである川島、その“包囲網”があればバレンティンも気分よくプレーするに違いない。
■バレンティンの成績
2019年
120試合:打率.280(410打数115安打)/ 33本塁打 / 93打点
通算
1022試合:打率.273(3513打数959安打)/ 288本塁打 / 763打点
(※写真はヤクルト時代のもの)
文=勝田聡(かつた・さとし)