ゴールデンウイークには全国各地で高校野球春季大会が開催され、各エリアの覇者が決まっている。夏の前哨戦となる春季大会。今年も波乱が多かった。今回は春季大会の最前線で起こった番狂わせをお届けしたい。
センバツで4強入りを果たし、完全に本格化した明石商。兵庫県内の指導者からは「当分、メイショウにはかなわない」と弱気な声が漏れ聞こえるほどの勢いで、実力と進学人気ともに1強体制に入ったかに見えた。2017年秋から県大会4連覇中(2018年夏は西兵庫大会)。さらに甲子園で実績を残したのだから、他校が弱気になるのも当然だ。
しかし、春の県大会で早くも待ったがかかった。3回戦、3対2の接戦で金星を挙げたのは須磨翔風だ。才木浩人(阪神)の出身校と知られる同校は、2009年に神戸西と須磨が統合して開校した神戸市立の公立校。筆者は『中学野球太郎』を取材している関係で周辺の中学球児に話を聞く機会も多いが、中学3年の夏頃に希望の進学先を聞くと、須磨翔風、社がツートップ。もちろん明石商も大人気だが、おいそれと口に出せない別格感があるのか、体感では2校が上回っている。
甲子園出場経験こそない須磨翔風だが、明石商を下し、さらには西宮東、東洋大姫路に競り勝って決勝進出。決勝では神戸国際大付に敗れたが、ちょうど1カ月前の神戸地区予選では、2対1で勝利している。
明石商のエース・中森俊介が投げなかったこともつけ加えておきたいが、ますます須磨翔風の人気、勢いが増していきそうだ。
センバツで全国制覇を成し遂げた東邦も愛知県大会初戦で姿を消した。相手は中部大第一、スコアは1対5。「完敗」と報じたメディアもあった。
ただし、これはチーム再編の影響も少なくない。エース・石川昂弥はセンバツでの疲労を考慮して、3番・三塁での出場。コンバートや打線の組み替えもあり、センバツ快挙によるチーム作りの遅れも感じられた。投手陣も調整不足だっただろう。
明石商と同じく「センバツ出場校あるある」だ。早々と姿を消したことで、逆に他校にとっては一層不気味な存在になったに違いない。
大阪府大会では波乱が相次いだ。まずは5回戦、平成の大横綱・大阪桐蔭が近大付に1対6で敗れて姿を消すと、準々決勝ではセンバツ出場の履正社が大商大高に2対3で惜敗。大阪が誇る2強が近畿大会にも駒を進めることができなかった。
春は調整段階との見方もできるが、大阪桐蔭と履正社は2010年から2018年まで2校で春の大阪覇者を寡占しており、常に両校は頂点を狙いにきている。
優勝した大商大高で注目を集めたのは、エース・上田大河。プロ注目の最速148キロ右腕で、大商大高〜大商大を経て広島に入団した岡田明丈2世とも評されている。準優勝の箕面学園も上がり目だ。
令和最初の大阪夏の陣は波乱含みになりそうだ。
文=落合初春(おちあい・もとはる)