いよいよ後半戦に突入したプロ野球。セ・パ両リーグとも1位チームこそ抜け出しているが、大勢が決したというにはまだ早い。
連勝、連敗すれば順位がすぐにひっくり返る状況は、緊張感に満ちている。今回は後半戦でチームに勢いをもたらしそうな選手をピックアップする。
首位・ソフトバンクに今以上勢いがつけば、完全に今季のパ・リーグの火は消えてしまう。そんな圧勝劇のカギを握るのは甲斐野央だろう。
サファテ、岩嵜翔などが復帰できず、森唯斗も故障しながら鷹のブルペンが破綻しないのは、14ホールド7セーブを挙げている、このドラ1ルーキーがいるからに他ならない。
ここからさらに独走するか、2位チームに追い上げられるかは甲斐野次第。今となってはドラフトで2度、1位指名の抽選を外して、甲斐野に巡り合ったのはいい結果だった。
前半戦終了時点でソフトバンクに7ゲーム差をつけられた日本ハム。ジェットコースターのように順位が上下動した6月を抜けて、後半戦はいかに戦うのか気になるところだ。
再びチームを上昇気流に乗せるのは、腰痛で2軍調整中の大田泰示と睨む。2017年のトレードを経て北の大地で覚醒した大田は、今季は打率、本塁打、打点のすべてでキャリアハイのペース。今のチームに戻ってくれば、まさに鬼に金棒といえる。
日本ハムは大田加入の前年に最大11.5ゲーム差を跳ね返して日本一まで駆け上がった。そのときに追いかけた首位は奇しくもソフトバンクだった。ミラクルの再現はなるか。楽しみにしたい。
菊池雄星(マリナーズ)と浅村栄斗(楽天)の移籍により、苦戦を強いられているディフェンディングチャンピオン・西武。しかし大きく崩れていないのは、高橋光成や今井達也といった若手先発陣の頑張りがあってこそ。
ただ、密かに浅村の穴を埋めている外崎修汰も見逃せない。外野から内野への再コンバートの影響か序盤は大ゴケしたが、3番に定着してからみるみる調子を上げ、6月には月間の打率が3割を超えた。
ちなみに15本塁打、15盗塁は自己最多ペース。外崎の打棒と足がしめらなければ鷹の尾をつかむ日も遠くはないはずだ。
貯金10でパ・リーグの首位に立っていたのも今は昔。大型連敗で4位まで後退し、あわや借金生活かという窮地を救ったのが復帰したエース……まさにドラマである。
そのエースとはもちろん則本昂大。春先に行った右ヒジのクリーニング手術により大きく出遅れたものの、戦列に返ってきた途端に、6回3安打無失点3奪三振の快投を披露。役者が違うと言わんばかりだ。
浅村の加入も大きかっただろうが、不安を抱えながらも首位に立っていたことを思えば「5割から仕切り直し」という気持ちで後半戦に向かえる。則本効果で再び頂を目指したい。
ケガの影響でなかなかシーズンを全うできていなかった荻野貴司だが、今季はほぼ休むことなく試合に出続けている。そして打率.330で目下の首位打者だ。
「できるなら最初からやってくれたらよかったのに」というマリーンズサポーターの嬉しい悲鳴が聞こえてきそうだが、ロッテが浮上するためにはこのまま荻野が元気であることが必要だ。
レアード、角中勝也、井上晴哉とランナーを還す選手はそろっている。それだけに、打撃力を身につけたスピードスターがこの調子でダイヤモンドを駆け回れば、代名詞である「下剋上」も夢物語ではない。
メネセスの禁止薬物による離脱など、前半戦は暗いニュースが目立ってしまったオリックス。幸いにも交流戦で2位と躍進したことで12あった借金を6まで減らすことができた。この流れを維持できれば借金完済も近いだろう。
そのためには現在、防御率1位(1.92)の山本由伸に、もっと白星を積み上げることが求められる。西武を完封し、ソフトバンクも無失点で抑えた力投を続けることができれば、オリックスはダークホースになり得る。
クライマックスシリーズ圏内の3位は遠いようで意外と近い。そう思わせてくれる山本にこれからも期待だ。
シーズンによってはオールスターゲームの頃にはAクラスとBクラスがはっきりしているときもあるが、今季のパ・リーグはまだまだわからない。1位のソフトバンクですら捲くられる可能性があると思えるのは、爆発力を秘めたチームが多いからだろう。
今回紹介したのはその導火線となる選手たち。起爆剤がどんな活躍を見せてくれるのか、後半戦はチームの勝ち負け以上に個を注視してみたい。
次回はセ・リーグ編をお届けする。
文=森田真悟(もりた・しんご)