3882人が集まった株主総会。宝塚ホテルの活用法や阪急線のダイヤ、滋賀県順延などの質問が今年の主要質問だったが、もちろんタイガース関連の一言もあったようだ。
「タイガースが超変革をされている、大変すばらしい。今年は若手を使うなど、ようやってくれとる。ファンはコレを求めていた」
2番目にマイクを握った男性株主のお褒めの言葉からはじまったタイガース談義。別の株主も原口文仁の躍動を引き合いに出し、金本知憲監督と掛布雅之2軍監督の連携を評価するなど、超変革は好評に終始。タイガース関連の回答を担当した阪神電鉄・百北幸司取締役も笑顔を見せ、胸をなで下ろした。
しかし、お褒めの言葉を述べた2人の株主もそれぞれ、「会社もそうだが、借金はよくない」「今の成績では変革詐欺と言われても仕方ないが……」と現状に一言物申すことを忘れていなかった。
そして、今年やり玉にあげられたのは片岡篤史打撃コーチ。80代の男性株主からは「なぜバッティングコーチが片岡なのか? あれが阪神で活躍したことがあるのか? みんな打てないようにしている」と苛烈な一言。春先に躍動していた若手陣のバットが湿りがちな現状を痛烈に批判した。
それでも百北取締役が「監督のもと、全コーチが信念を持って指揮にあたっています」と回答すると会場からは暖かい拍手。角和夫社長が「阪神タイガースの名称を変えることは未来永劫ない。タイガースは阪神タイガース」と名言する場面もあり、今年は和やかな進行だったといってもいいだろう。
しかし、例年はそうはいかない。
昨年は「和田豊監督を辞めさせて岡田彰布氏を再登用したらどうか」「なぜドラフトで森友哉(西武)を獲らなかったのか」という声があがった。
2012年には「城島健司と小林宏は不良債権だ!」とケガや不調で2軍暮らしが続くベテラン2人が“損切りせよ”と言わんばかりの吊るし上げを食らい、2014年は当時不調だった福留孝介がやり玉にあがった。そのときも株主総会前に福留が2軍降格しており、嘘か真か、「株主総会対策」との怪情報も流れた。
選手にとっても大きなプレッシャーがかかる株主総会だが、近年、もっとも大荒れだったのは2011年。この年は4位に終わったが、春先からスタートダッシュに失敗し、さらにはスローイングに不安を抱える左翼手・金本が守備の大穴になっていた年だ。
そのため、株主総会では真弓明信監督への大批判が巻き起こり、「選手ではなく監督やコーチを補強しろ」「金本の守備で5点は損した」など鼻息荒いファンの一言一言に満場の拍手。経営陣もただただ平身低頭で身を縮めるしかなかった。
今年は金本新監督就任の御祝儀的な面もあっただろう。しかし、来年はどうなるかわからない。阪神の戦いぶり、采配には“もの言う株主”の厳しい視線が注がれている。
文=落合初春(おちあい・もとはる)