昨年7月の都市対抗野球。約6分30秒のショーケースとも言えるマウンドで「人生」を決めた。日本新薬の補強選手として出場した森原は、Honda熊本戦で3点リードの9回に登板。151キロをマークし、三者凡退でゲームを締めくくった。この投球が楽天関係者の目にとまったのだ。快投はここから始まった。
2月の久米島キャンプを1軍で迎えると、開幕前の練習試合とオープン戦でも即戦力をアピール。合計10試合に投げ、6試合で三者凡退に切ってとり、開幕1軍入りをつかんだ。
デビューはすぐにやってくる。3月31日の京セラドーム、オリックスとの開幕戦。同点の7回だった。青山浩二、則本昂大に続く球団史上3人目の「プロ初登板を開幕戦」で飾ると、ヒットを1本許したものの、後続を抑えて1イニング無失点。同点に追いつかれた直後の登板で、流れに飲まれそうなところを断ち切り、チームの延長戦勝利に貢献した。
上々な滑り出しを果たしたが、さらに凄いのは、翌4月1日以降だ。西野真弘、鈴木昂平、安達了一をピシャリと抑えると、4日と6日のソフトバンク戦、8日と9日のロッテ戦と開幕8試合で6登板とフル回転。
5イニング連続で三者凡退投球を続け、開幕戦で駿太をキャッチャー前のバントゴロ失敗で仕留めたのを皮切りに、「打者16人連続アウト切り」を見せている。
森原の最大の武器は、空振りを奪えるファストボールだ。185センチの上背から投げ下ろす角度のあるストレートは平均145キロを計測。全体の70パーセントほどの割合で打者に投げ込み、目下、打者をタジタジにさせている。
6日のソフトバンク戦では、松田宣浩との対決が見どころだった。初球にストレートでストライクを取った後、変化球が2球連続でボールになり2-1。カウントを立て直すべく森原が投げたストレートを、ストレート狙いの松田が打ち返した、という場面。
軍配はルーキー右腕に上がった。森原の球威が侍ジャパン戦士のバットを押し込み、右飛に打ち取ったのだ。
驚かされるのは、パワーピッチャータイプながら制球力も安定していること。投球フォームに力みがないのが大きいのだろう。開幕前の対外試合では打者41人と対戦、開幕後18人と対峙してきたが、いまだに四死球を与えていない。
一般的には即戦力と期待される社会人出身の投手。しかし、楽天の場合、ルーキーイヤーからバリバリ働いたケースがこれまで皆無だった。その不名誉な記録に、森原が終止符を打ち、Aクラス入りの原動力になるときが近づいている。
文=柴川友次
信州在住の楽天推しの野球好き。ノムさんの「ID野球」「弱者の兵法」に感化され、イーグルスに関するありとあらゆるデータの収集を実施しながら、ペナントレースを追いかけているデータ好きの野球ブロガー。2,500人以上にフォローされているTwitterアカウントは@eagleshibakawa。