しかし、今永の投球内容は、原よりも素晴らしいといえるだろう。注目すべきは防御率。負けが3つ付いているものの、防御率は2.39。原は防御率5.57で負けが2つ。チーム打率.244と最下位に喘ぐDeNAをバックに投げる今永の0勝3敗は、あまりにも酷な結果といえないか。
今永の武器は、駒澤大時代から絶賛されている“三振がとれるストレート”。4月24日の対巨人戦での登板でも、あの野村克也氏をして「受けてみたい」と言わしめたストレートである。
柔らかくて弾力のあるフォームから繰り出される140キロ台中盤のストレートは、多くのスカウトから太鼓判を押され、アレックス・ラミレス監督も、交渉権獲得直後に「大学ナンバーワン投手を獲得できた」とコメントした。
ドラフト1位の期待を一身に受け、シーズン前もキャンプ中からの試合を含め4試合に登板。オープン戦では17イニングを投げ、被安打11の3失点と好投。「プロ初勝利は時間の問題」のように見えた今永。しかし、シーズンに入ると、助っ人外国人を中心としたチームの貧打により勝ち星を逃してきた。
これまでの投球内容から、まだまだ先発登板の機会は与えられえるに違いない。なにせ課題である打線の奮起が待たれるところ。またこの今永を「生かす」技量も必要だろう。
野村克也氏は、同じ駒澤大の頃から女房役を務めてきた捕手・戸柱恭孝のリードに対して「ストレートに酔っている」と指摘していた。今永と戸柱が二人三脚で配球面を勉強することで、勝利への距離を縮めることができるだろう。
ここまで波に乗れないDeNA。それでも多くのファンが連日、声を枯らして応援している。新人バッテリーが成長して、今永が初勝利を挙げる日は、いつになるかわからない。だが、これから10年以上もDeNAの中心選手として活躍する可能性のある2人を今は黙って応援しよう。
まずは1日も早く、今永の輝かしいプロ1勝目の朗報を待ちたい(記録はすべて4月25日現在)。
文=元井靖行(もとい・やすゆき)