今年もさまざまな記録が生まれたプロ野球。「トリプルスリー」のように、今季どうだったか!? という単年勝負で生まれる記録には、アスリート独特の“一瞬に賭けるパワー”を感じ、興奮する。その一方で、山口鉄也(巨人)の日本記録「8年連続60試合登板」ように、継続力が問われる記録こそ本当のプロフェッショナル、とも言い表すこともできる。
ただ、記録はいつか途切れてしまうもの。何年も継続してきたにもかかわらず、今季途切れてしまった記録もいくつか存在する。代表的な3例を振り返ろう。
上述したように、巨人の山口が今季60試合に登板し、2008年から続く「連続60試合以上登板」の日本記録を「8年連続」に更新した。
この記録を追いかけていたのが、2014年のパ・リーグセーブ王、平野佳寿(オリックス)。昨季まで5年連続で60試合以上に登板し、今年も年始には「6年連続60試合以上の登板」への抱負を語っていた。
ところが、開幕早々にベースカバー時に右足首を痛めて登録抹消。これでつまずいたのか復帰後も精彩を欠き、シーズン終盤には腰痛でまたも登録抹消。最終的には33試合登板に終わり、6年連続60試合登板はできなかった。
ちなみに、平野以外にもケガ人が続出したオリックス。主将の糸井嘉男も満身創痍で1シーズン悩み続け、最終打率が.262。昨季まで6年連続で打率3割を記録していたが、7年連続とはならなかった。
糸井でも達成できなかった「7年連続打率3割」を昨季達成したのがソフトバンクの内川聖一だ。横浜に在籍していた2008年に打率.378をマーク。以降、2014年シーズンまで7年連続で打率3割以上の数字を残していた。
この「7年連続打率3割」は、あの落合博満(元ロッテほか)と並ぶ、NPB右打者最長記録。今季、3割を記録すれば新記録達成、となるはずだった。
ところが、内川の今季最終打率は.2835に終わった。
もっとも、この数字でもパ・リーグの打率10位。決して、悪すぎる成績だったわけではない。また、今季はソフトバンクの主将、そして4番打者に指名され、例年以上に「フォア・ザ・チーム」に徹しなければならなかった、という側面も影響しているだろう。
クライマックスシリーズで肋骨を骨折し、日本シリーズへの出場が叶わなかった内川。チームは日本一になったとはいえ、本人としては納得のいかない気持ちも強いはず。しっかり傷を癒し、また来季から3割を軽々と突破する打棒をみせて欲しい。
今季からマイアミ・マーリンズに移籍し、「第4の外野手」という立場を選んだイチロー。ところが、レギュラー陣に負傷が相次ぎ、終わってみれば昨季の143試合385打席よりも多い、153試合483打席に出場した。
ところが、安打数は昨季が102安打だったのに対して、今季は91安打。打席数が増えたにもかかわらず安打数が減るという、明らかな衰えを露見してしまった。
これで、NPB時代の1994年から続いていた、「シーズン100安打以上」の記録も21年でストップ。ちなみに、「21年連続100安打以上」は、王貞治(元巨人)も達成した歴代最長タイ記録。世界のイチローをもってしても、世界の王超えはならなかった。
今季のイチローは打率.229。ブレイクした1994年以降では最低の数字に終わってしまう。にもかかわらず、シーズン終了後すぐ、マーリンズとの来季契約を締結した。残り65本に迫ったメジャー通算3000安打達成をチームも望んでいるからという理由。そして、若手選手への「生きた教材」としてプレー以外の準備面、精神面などを学ばせたい意向も含めた契約、ともささやかれている。
来季もイチローのプレーが見られることは嬉しい。だが一方で、ただの「手本」で終わるような姿はもう見たくない、というファンもいるだろう。どのファンも満足させるためにも、来季改めて「100安打超え」を目指してもらいたい。
文=オグマナオト(おぐま・なおと)