キャンプからオープン戦へ、プロ野球界の季節は移る。今年もやはり「いの一番」に話題に上がったのは斎藤佑樹(日本ハム)だった。
2月9日、今季初実戦の阪神との練習試合で先発し、2回を無失点に抑え、上々のスタートを切った。使われ方はいまだに「期待のスター候補」である。
プロ9年間で88登板15勝26敗、防御率4.34。昨季は11試合に登板したが、0勝2敗、防御率4.71に終わった。
確かに首筋が寒くなってきている現状。早稲田大進学が正しかったのか、盛んに議論された時期もあるが、今となっては微々たる問題だろう。
早稲田大時代は東京六大学リーグで61試合に登板し、31勝15敗、防御率1.77。大学日本代表にも選出された好投手だった。左股関節の故障により、フォームを崩していたことは事実だが、4球団がドラ1で競合したことからもその素材のよさはうかがえる。
プロ1年目の斎藤佑樹は悪くなかった。19試合で107回を投げ、6勝6敗、防御率2.69。統一球(飛ばないボール)の追い風もあったが、先発ローテにしっかりと食い込み、実力を発揮しつつあった。
2年目はややプロの壁に苦しみ、19試合で5勝8敗、防御率3.98と数字を落としたが、大卒2年目の投手としては、期待できないレベルではなかった。
しかし、3年目、右肩の関節唇を痛め、1登板に終わると右肩下がりの成績に……。2020年の今に至るまで「期待外れ」の烙印を押され続けている。
故障後、幾度も「全盛期」のフォームを取り戻そうと四苦八苦している斎藤だが、残念ながら故障の影響は大きく、復活には至っていない。
現に2回で4奪三振を記録した阪神との練習試合でもどちらかと言えば、立ち投げに近いフォームだ。
しかし、割り切ってしまえば、決して悪い状態ではない。140キロ台の球を投げられないわけでもなければ、抑えられないわけでもないのだ。
細身であることはさておき、外国人投手や巨漢投手など、立ち投げでも活躍する投手はゴマンといる。今年はカーブの再習得に励んでいるが、確かにパワーカーブが映えそうなフォームだ。
全盛期のストレートにこだわるよりも得意の変化球の再現性を高め、短いイニングを飄々と投げられるようになれば、使いどころはある投手に見える。幸い日本ハムでは栗山英樹監督がオープナー制の継続を明言しており、そこに焦点を合わせれば、まだまだやれるはずだ。
怖いのは、欲張りすぎてケガをしてしまうことだ。全盛期のように沈みこもうとすると球が荒れ、ギクシャクしたフォームになってしまう。現状の及第点をキープし、出番がない状況、出場できない状況は避けるべき。ある程度はやれる実力の持ち主なのだから……。
文=落合初春(おちあい・もとはる)