史上5人目の防御率0を記録するなど、明治大では1年生から大活躍した野村。
菅野智之(巨人)、藤岡貴裕(ロッテ)と並び、大学ビッグ3と呼ばれドラフトの目玉選手とまで成長した野村は、2011年のドラフト会議で、広島から単独1位指名を受け、広島に入団。目玉選手の評価通り、1年目からファンの期待以上の活躍を見せる。
9勝11 敗防御率1.98
惜しくも2桁勝利はならなかったが、防御率1点台は史上5人目の快挙。新人王の記者投票では、2位選手に160票の大差をつける圧勝で新人王の栄光を手にした。
その翌年も12勝をあげ、チーム初のクライマックスシリーズ進出に貢献するなど、チームの中心選手として活躍。これからエースへと期待された野村だが、この年以降は冴えない成績しか残せていない。
2014年 19試合7勝8敗 防御率4.39
2015年 15試合5勝8敗 防御率4.67
と、ローテーションを守ることもままならい状態となってしまった。
2015年に至っては、ネットで話題になった、某局某アナウンサーを巡るDeNA某投手との熱すぎる投手戦が唯一の見せ場となったくらいで、優勝候補とされながらBクラスに終わったチーム同様、沈黙したまま終わってしまった。
以前は次世代のエースとして期待されていた野村。しかし2年続けての不振のため、今シーズンの期待値はかなり低かった。1年目の野村がピークという声も多く、終わった選手と見る向きも少なからずはあったほどだ。
そんな野村がここまで好調であるのは、広島ファンにとっては嬉しい誤算とも言えるだろう。
野村はここまで、8勝2敗、防御率2.41と安定感を見せている。その復調の原因はどこにあるのだろう? それは与四球の割合、すなわちコントロールにあるのではないかと考える。
ここまで野村の四球数は19。規定回数到達投手の中では、菅野(巨人)、石田健太(DeNA)、黒田博樹(広島)についで4番目に少ない。与四球率にすると2.290となり、自己ワースト2016年の3.181から比べ大きく改善している。
昨シーズンは、突然崩れ大量失点しまう場面が何度か見られたが、今シーズンはそのシーンはあまり見られていない。元々、球速よりもコントロールと球のキレで勝負する投手。四球が減り抑えているということは、コントロール、球のキレ共に「全盛期」に戻ってきているのだろう。
今シーズンは、チームメイトのクリス・ジョンソンからパワーカーブを習得。スパイクも大学時代の物に戻すなど、復活のためにできることはしてきた。努力の賜物が現在の成績に現れている。
とはいえ、好調の野村であっても課題は多い。現在、12試合の登板で投じたイニングは74回と2/3。1試合平均約6イニング程度しか投げていないという事になる。年に直すと175イニング。これではエースとしては物足りない。もう少し長く投げられるスタミナをつける事は急務と言えるだろう。
広島のとなりの岡山県出身。高校は広島の名門広陵高。広島ファンにとっては強い思い入れのある野村祐輔。真のエースと呼ばれるその日は近いと、確信している。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)