あの素晴らしい松坂大輔をもう一度!
プロ野球は開幕して半月が経過。好スタートを切ったチームや、期待に反する成績で、もがき苦しむチームなど、悲喜交々の様相を呈している。
たとえば、昨季、日本一のソフトバンクは、開幕前の予想に反して波に乗れない状況が続いている。そして、9年ぶりにNPB復帰を果たした松坂大輔は、未だ1軍のマウンドに立つことができていない……どころか登板できるメドさえも未定になってしまった。はたして、今後の松坂はどうなるだろうか。
そこで、今回の「タイツ先生のフォーム徹底解剖!」では、その松坂大輔にクローズアップ。かつて『平成の怪物』と呼ばれた松坂大輔について、タイツ先生(「自然身体構造研究所」所長・吉澤雅之氏)に、徹底的に語ってもらった。
注目すべきポイントは腕の振りではない!
日本在籍時の松坂投手の一番の特徴は、下半身の使い方にありました。高校時代、甲子園のマウンドで投げていた松坂投手を思い出して下さい。リリース時に軸足が“ビュッ”と宙に浮き、上半身が沈んでいく動きと同時に、後ろ足が“フッ”と脱力する松坂投手独特の動きをしていたと思います。
ところが、メジャーリーグへ移籍後は、最大の特徴であったこの下半身の使い方が失われてしまいました。理由は、マウンドの硬さにあります。日本に比べてメジャーのマウンドは硬く、踏み込んだ足から、上体の力(重さ)を逃がすことが難しい。
すると、松坂投手の下半身の動きは制約されてしまいます。スムーズな体重移動が失われ、後ろ足を引きずるような投げ方になってしまいました。
前足で体重を逃がすことが、できなくなった分、メジャー時代の松坂投手の投球フォームは、タテ回転から横回転に変わってしまった印象があります。身体を横回転に使えば、マウンドの硬さに関係なく、上体の力(重さ)を踏み込んだ足から横方向に逃がすことが容易になるからです。メジャー時代の松坂投手は、まるでサイドスローのような、投球フォームに変化してしまいました。
マウンドを“蹴る”という表現のウソ
松坂投手の日本在籍時のフォームを、もう少し詳しく説明しましょう。投球時に後ろ足が“フッ”と脱力するという動きは、「後ろ足の重さを一度センター方向に働かせて、身体側に引きつける動き」と言い換えることができます。
この一連の動きについて、よく(プレートを)“蹴る”という表現が使われますが、実際は違います。“蹴る”というよりは、股関節を脱力することで、バネのように下半身を使用することが可能となり、そこで生まれたエネルギーをリリース時に伝えることが、できたのです。
後ろ足の重さを利用しながら、左右両方の股関節を“抜く”と、身体に“割れ”が発生して、身体全体を軸回転で使うことができるのです。
日本復帰後は試行錯誤中……
日本のマウンドは柔らかかったので、タテ回転の投球フォームから生じる、その力を逃がすことができていた。日本球界復帰にあたり、マウンドが柔らかくなったことで、メジャー時代に比べて、楽に投げることができるのではないでしょうか。
しかし、メジャー時代に染みついた投球フォームを元に戻すには、少なからず時間がかかるでしょう。松坂投手のオープン戦の投球を見ると、1試合毎に微妙にフォームが異なります。これは恐らく、松坂投手自身も試行錯誤を続けながら、自分に合った投球フォームを探し出しているように見えますね。
日本在籍時のフォームに戻すのであれば、踏み台を使用したトレーニングがオススメです。踏み台からボールを投げる際に、踏み台から軸足を踏み外す。左右両方の股関節を脱力させることで、横ではなくタテ回転の身体の使い方を思い出すでしょう。
★★★次回も続けて、松坂投手が復活するに、どうするべきかタイツ先生に解説してもらいます。そのためのマル秘トレーニングも公開!? お楽しみに!
■プロフィール
タイツ先生/1963年生まれ、栃木県出身。本名は吉澤雅之。小山高時代は広澤克実(元ヤクルトほか)の1学年下でプレーした。現在は「自然身体構造研究所」所長として、体の構造に基づいた動きの本質、効率的な力の伝え方を研究している。ツイッター:@taitsusensei では、野球、サッカー、バスケットボールなど国内外問わず、トッププロ選手たちの動きについて、つぶやいている。
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