前半最終戦の「2番・二塁・マギー」構想以来、猛烈に巻き返しに成功している高橋巨人。勝利の要因はようやく起爆剤が現れたことだろう。
その一人はドラフト2位ルーキーの畠世周だ。7月6日に1軍デビューを果たすと9試合で5勝2敗の成績を挙げ、夏場の好調に貢献している。
しかし、畠の起用までにはかなりの時間がかかった。表ローテは菅野智之、田口麗斗、マイコラスで固まっているが、裏ローテはかなり制約がある。FA・ベテラン陣がそれを象徴している。
大竹寛は1軍と2軍を行き来しながら13先発で4勝4敗、防御率5.09。内海哲也も12先発で2勝7敗、防御率5.77。吉川光夫も5先発で0勝2敗、防御率4.00。山口俊は4先発で1勝1敗、防御率6.43、現況は周知の通りだ。
全体的に見ると表ローテとリリーフ陣のマシソン、カミネロを除けば投手陣崩壊といっても過言ではない。畠の起用にたどり着くまでに幾段もの“順序”があったことに間違いはないだろう。
だが、これは編成と球団の姿勢の問題だ。裏ローテでは試合を作れる投手が明らかに少ない。GMが交代し、7月から8月にベテラン・FA陣に見切りをつけ、ようやくリスタート体制が整ったばかりだ。
小手先の起用チェンジはことごとく外れるが、2番・マギーの起用やベテラン投手陣の見切りなど、ドラスティックな改革は成功する傾向にある。固執を打ち破ったとき、不思議と結果がついてくるのが高橋監督の特徴だ。
次なる試金石は宇佐見真吾だ。8月8日に1軍に昇格すると24打席で3本塁打をかっ飛ばし、8月25日、26日にはスタメンマスクを被った。しかし、起用が1カ月で11試合に出場し、先発が2試合にとどまっているのは、投手陣の小林誠司に対する信頼感だ。
しかし、現在のプロ野球で捕手一枚体制は時代の流れに乗っていない。小林の疲労の蓄積もあるだろう。
ここをトップダウンで宇佐見を二枚看板に育てきれるか。「お前が宇佐見を育ててくれ」と指導役を見つけ、小林を「負担を減らす」と納得させられるか。その“折衝”こそが監督の見せ場だ。
ファンの期待は「強い監督」だ。高橋監督が強烈な大ナタをふるうことを望んでいる。「俺が監督だ」と強く出てもファンの支持は失われない。その背景を生かして、いい意味でメチャクチャにしてほしい。
文=落合初春(おちあい・もとはる)