【優秀選手その1】大西健斗(北海)
優秀選手の筆頭は、創部116年目の野球部を初の決勝戦に導いた北海の大西。決勝戦こそ2回途中で無念の降板となったが、それまでの4試合を1人で投げきり、まさにエースというべき仕事を果たした。
昨年の夏の甲子園では1回戦で登板したが、1アウトも取れずにマウンドを降りた。しかし、1年後には聖地で4勝できる投手に成長。苦い経験を見事なまでに素晴らしい思い出に塗り替えた。
【優秀選手その2】入江大生(作新学院)
優勝した作新学院からは、入江大生を優秀選手に挙げたい。
打っては3試合連続マルチヒットに2試合連続ホームラン。投手としても準決勝の明徳義塾戦で9回に3番手として登板し、3人でピシャリと抑えるなどエース・今井達也を援護。
そんな充実のなかで迎えた決勝戦では、初戦以来の4番で3打数1安打2四球と活躍。自ら優勝に華を添えた。
【優秀選手その3】九鬼隆平(秀岳館)
準決勝で敗れ、春のセンバツと同じくベスト4で散った秀岳館だが、そのなかから優秀選手として推したいのは九鬼隆平だ。
4番・捕手として好守の要を担った九鬼。北海との準決勝では1対4のビハインドからライト前ヒットを放ち、ライトが後逸する間にホームにヘッドスライディングしたシーンはまだ記憶に新しい。
まさに高校No.1捕手の面目躍如だった。
【野球太郎的甲子園MVP】今井達也(作新学院)
最後になった「野球太郎的甲子園MVP」の発表だが、今年は誰に聞いても作新学院の今井の名を挙げるのではないだろうか。
初戦で最速151キロを叩き出し13奪三振を奪って波に乗ると、毎試合150キロオーバーを計測。決勝を含め登板した5試合すべてに白星がつき、4完投(1完封)で防御率は1.10。
挙げ始めればきりがないほどの好成績が並ぶことから、対戦相手からすると脅威以外の何物でもなかったはずだ。
作新学院に54年ぶりの快挙をもたらしたことにもうなずける、誰もが納得のチャンピオンピッチャーである。
今回、「野球太郎的甲子園MVP」と優秀選手を決めるにあたって、あらためてスポーツ新聞を読み返した。
とはいえ、先にも書いたようにMVPは今井一択。一方で優秀選手候補はほかにもおり、例えば戦前から大会を盛り上げていた「投手BIG3」や、「やられたらやり返す盛岡大付」なども非常に印象深かった。
しかし1人の選手という観点でいくと、やはり今回挙げたメンバーに一票を投じたくなる。
チームとして勝ち上がりながら個の力を存分に発揮し、観衆に興奮と感動を与えることは誰にでもたやすくできるものではないと、あらためて感じたからだ。
文=森田真悟(もりた・しんご)