CSを前にエース・山口俊はファーストステージの登板回避が明言されていた。投手陣で切り込み隊長の重責を担ったのは、ペナントレースで巨人戦に好成績を残した井納翔一だった。
ファーストステージ第1戦、井納は7イニングを7安打2失点に抑える108球の熱投。普段はあまり見せない井納のガッツポーズに、DeNAのCSにかける思いを感じた人は多かったのではないか。
エース・菅野智之を欠いた巨人であったが、第1戦の先発・マイコラスは無難な立ち上がり。巨人打線も先制点を挙げる。
しかしその後、梶谷隆幸が目の覚めるようなバックスクリーン横への本塁打、さらに1点のビハインドで迎えた6回。DeNAファンの誰もが期待する筒香嘉智が逆転2ラン。普段は物静かなキャプテンは雄叫びをあげた。CSファーストステージの明るい未来を確信させる瞬間だった。
第1戦の最終回、東京ドームは山崎康晃の入場テーマ曲に乗って、「康晃ジャンプ」に大いに揺れた。
しかし2アウト後、あっさりと試合にピリオドを打つはずが、坂本勇人の痛烈な当たりがスタンド上段に突き刺さる。巨人は初戦を落としたものの、今シーズンのリーディングヒッター・坂本の健在を示した。
山崎康が坂本に一発を浴びたものの、DeNAは5対3でファーストステージ第1戦をものにする。
続く第2戦でも、坂本は好投を見せていたDeNAの先発・今永昇太から本塁打。坂本の一発が効いて巨人が2対1で勝利し、1勝1敗に持ち込んだ。
迎えた第3戦、すべてを託されたDeNAの先発はプロ入り2年目の石田健大。5回1/3を4安打に抑えるも、2本の本塁打を浴びてあえなく降板した。
しかし、このCSファーストステージにはラッキーボーイが潜んでいた。ペナントレースを支えた捕手・戸柱恭孝の陰で大半をファームに甘んじていた嶺井博希だ。途中出場した嶺井は11回、決勝点を叩き出し、ここまでファームでため込んできたパワーを爆発させた。
DeNAは厳しい接戦続きのCSファーストステージを2勝1敗で勝ち抜けた。セ・リーグのCSファイナルシリーズをペナント3位チームが制した例はいまだかつてない。
だが、ペナントレース終盤のDeNAの勢い、そして、ファーストステージの戦いぶりを、実戦からやや離れた広島はどう見ているだろう。ペナントレースで先発の柱を担った山口が復帰すれば、日本シリーズ進出も現実味を帯びてきそうだ。
文=元井靖行(もとい・やすゆき)