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「甲子園場所」で衝突した巨漢・ゴンザレス&おかわり君(西武)。捕手と球審を瞬殺のペーニャ(楽天)

甲子園での試合にてチームメイトの中村剛也と衝突した西武・ゴンザレス

 プロ野球選手はカッコいいプレーで魅せてなんぼ。しかし、お茶目な笑いを与えてくれる選手には親近感が湧き、俄然応援したくなる。

 週刊野球太郎では先月の『プロ野球泣ける話』に続き、連載『笑っていられればファンは幸せ! プロ野球笑える話』をお届け中。

 プロ野球選手が巻き起こした「とっておきの笑える話」。今回はどんなエピソードが飛び出すのか。

同部屋同士の大一番が甲子園を舞台に幕を開ける


 エンリケ・ゴンザレス、という助っ人外国人を覚えているだろうか?

 2012年の1年間だけ西武に所属していた投手で、16試合に登板したものの2勝5敗、防御率7.04とまったく結果を残せず、その年限りでお役御免となった。

 しかし、100キロを超える巨漢に、愛くるしくもイカツい顔つきのゴンザレスがファンに与えたインパクトはなかなかのもの。筆者が今なお強烈に覚えているのが、5月27日の西武対阪神戦(甲子園)での出来事だ。

 2対2で迎えた9回裏、西武の守り。無死一、二塁の場面で送りバントのボールがゴンザレスの前に転がったときに事件が起きた。猛然とチャージしてきた一塁の中村剛也(西武)とゴンザレスが衝突したのだ。

 中村のタックル(?)に吹き飛ばされ、グラウンドに尻餅をつくゴンザレス。175センチ102キロの中村と178センチ102キロのゴンザレスのぶつかり合いは、さながら相撲のよう。いきなり開幕した「甲子園場所」に、観衆は大いに湧いた。

 ちなみに次の打者でゴンザレスは交代。ユニホームのお尻と背中を真っ黒にしてベンチに戻る姿は、取り組みを終えた力士のようだった。

 なお、試合はゴンザレスの後をつないだウィリアムスが押し出しの死球を与え、西武は2対3でサヨナラ負け。お笑いプレーから、なんとも締まりのない敗戦となった。

まさかの“三重殺”となった電光石火の珍事


 続いては審判を巻き込んだ「瞬殺エピソード」を。

 2015年5月15日のソフトバンク対楽天(ヤクオフ!ドーム)。ソフトバンクのスタンリッジ(現ロッテ)が投じた球が、打席に立つペーニャ(楽天)の太ももに当たった。

 ここまではよくある死球。しかしボールがペーニャの太ももの表側に当たったことで、ボールの勢いが殺されぬまま角度だけが変わって捕手・鶴岡慎也(ソフトバンク)の腕へと襲いかかる。

 そして、鶴岡の腕に当たったボールは、今度は上向きに角度を変えて球審・杉本大成の胸にも襲いかかったのだ。

 その間、一瞬の出来事。ほぼ同時に悶絶する鶴岡と杉本球審。一方、「最初の被害者」ながら、痛がる素振りすら見せずに一塁へ向かうペーニャ。ダメージに違いのありすぎる「1人対2人の構図」に思わずクスリ。どれだけ頑丈なんだよ、ペーニャ!

 また、ペーニャにボールが当たった直後、ほぼ同時に痛がる鶴岡と杉本球審のシンクロ率の高さも味わい深い「笑えるポイント」。まるでコントを見ているかのような錯覚に陥る。

 当の本人たちは、痛みでそれどころではないのだろうが……。


好感度アップのつもりが……。あわやの敗退行為に?


 フライをキャッチした選手がスタンドのファンにボールを投げ入れる。ファンサービスとして定着していているシーンのひとつだ。

 しかし、1つタイミングを間違えるとファンサービスが大惨事になるということを、何人かの選手が身をもって教えてくれている。

 なかでも傑作だったのが、2015年7月20日のヤクルト対DeNA(横浜スタジアム)での雄平(ヤクルト)の「やらかし」。

 DeNAのバルディリスが打った一塁後方の飛球を、ヤクルトの二塁・山田哲人と右翼・雄平が追いかけたときのこと。一足先に山田が落下点に入ったものの、グラブに当てて落球してしまう。

 そのままファウルゾーンに転がっていく打球。フェンス際でボールを拾い上げ、迷わずファンサービスでスタンドのファンにボール渡す雄平。それを見て、泡を食ったように駆けつける山田。

 山田はすかさずファンからボールを取り返して内野に返球。実は、フェアゾーンでの落球だと山田は自覚していたのだ。一方、雄平はファウルゾーンで落球したと思い込んでいた……。

 2人の認識の違いから生まれたハプニングだが、のほほんとファンにボールを渡す雄平と、必死の形相でボールを取り返す山田との落差は、今、思い出しても笑みがこぼれる。

 ちなみにこのプレーで三塁まで進塁したバルディリスは、後藤武敏の二塁ゴロの間に生還。ヤクルトが試合には勝ったが、一歩間違えたら敗戦につながる大ポカになるところだった。


プロ野球の笑える話は偶然の副産物


 珍プレーで構成した今回の笑える話。いかがだっただろうか。

 どのプレーにも共通しているのは、真剣にプレーした結果であるということ。必死だからこそ、にわかには信じられない珍しいことも起こる。狙って「何か笑をとってやろう」というのは不可能である。

 まさに、筋書きのないドラマに彩られたプロ野球。これからもシリアスな勝負から生まれる珍プレーも楽しみたい。


文=森田真悟(もりた・しんご)

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