緊急登板の大本命であり、不測の事態には実際にマウンドに上がっても不思議でないのが今宮健太(ソフトバンク)だ。
投手を7人継ぎ込み、10対9の大接戦を制した7月1日の楽天戦。試合終了後、今宮は「投げる準備はしていました」と報道陣に語った。
明豊高時代に甲子園で154キロを計測したストレートはいまだ健在のよう。キャンプではブルペンで投球練習。威力のあるボールを投げ込み、周りを驚かせたほどだ。
6月10日の阪神戦では、最後の控え捕手・鶴岡慎也に代打を送った9回裏にもし追いついていたならば、延長で川崎宗則が捕手として出場する可能性があったことで話題になった。
もし、延長で投手と捕手を使い切る総力戦になったときは、「今宮―川崎」のバッテリーが見られるかもしれない。
PL学園高出身の松井稼頭央(楽天、指名球団は西武)と習志野高出身の福浦和也(ロッテ)は、ともに1993年のドラフトで入団。高校時代はエースだったが、2人とも1年目にコンバートされた。
同様のパターンでプロ入りしたイチローはプロ24年目の2015年、MLBで公式戦プロ初登板を果たした(オリックス時代の1996年のオールスターゲームでは登板経験あり)。
松井稼も福浦も今季でプロ24年目。松井は松井でも稼頭央のマウンド。楽天ファンも裕樹とはひと味違う「リリーフ・松井稼頭央」を見てみたいのでは?
駿太(オリックス)と秋山翔吾(西武)は、ともに投手経験は中学までだったという。
しかし、守備位置の外野からキャッチャーミットへ矢のように吸い込まれるレーザービームは、球速も制球力も投手そのもの。マウンドからの剛速球も期待したくなる。
大阪桐蔭高では投手としても活躍。ヒジの故障で投手でのプロ入りは断念したが、本人は「ピッチャーで一流になりたいってずっと思ってた」と過去の『野球太郎』のインタビューで語っていたように、とにかく投げることが好きだった。
同僚の「二刀流」大谷翔平の活躍をどんな思いで眺めているのだろうか? ヒジの故障がなければ「二刀流」の代名詞がつくのは、中田の方が先だったかもしれない。
野手の投手起用には否定的な意見が多いが、ベンチ入りの人数制限があるので、投手の負担を軽減する作戦としては有効な方法でもある。また、万が一の可能性だが、投手陣を使い切る総力戦も起こるかもしれない。
もちろん山なりのボールや四球を連発するようならいただけないが、野手が投手顔負けの投球を披露すれば、大味な試合にアクビを噛み殺していた観客も、一気に目が覚めるに違いない。
「相手打者に失礼」、「野球を舐めている」と、「喝!」を入れそうなOBや評論家もいそうだが、たまには、そんなワクワクする試合があってもいいじゃないか、とイチ野球ファンとしては思う。
文=溝手孝司(みぞて・たかし)
札幌在住。ライター、イベント関連など、スポーツ関連の仕事を精力的にこなしている。北海道生まれなのに、ホークスファン歴約40年。7月7日の札幌ドームはビール半額DAY。ビジター席で思う存分ビールを飲んで応援する予定。試合終了まで記憶…あるかしらん?