かつては温暖な西日本が屋外スポーツでは有利と言われてきたが、今夏の甲子園ではどうなのだろうか。本稿執筆時点では3回戦が終わったばかり。そこで3回戦までの東西対決の勝敗、さらには東西対決における安打数や本塁打数などのスタッツを比較してみた。
(※東西の境目は2006年までの「初戦東西対決」の区分けに則り、東の境目を新潟・長野・富山・岐阜・三重、西を福井・滋賀・京都・奈良・和歌山(石川も西)とする)
【東西対決・勝敗】
東日本:13勝
西日本:10勝
3回戦までの東西直接対決は全部で23試合。8強に残った高校を見ると、東日本が北海(南北海道)、聖光学院(福島)、常総学院(茨城)、作新学院(栃木)、木更津総合(千葉)、西日本が鳴門(徳島)、明徳義塾(高知)、秀岳館(熊本)となっており、東日本が1校多いが、その結果と同じく、今夏3回戦までの東西対決は東日本がリードしている。
なかでも木更津総合(千葉)は唐津商(佐賀)、広島新庄(広島)の西日本2校を破ってベスト8に進出している。
【東西対決・得点数】
東日本:103点
西日本:94点
東日本の3勝リードに伴い、得点数でも東日本が9点のリード。1回戦での中京(岐阜)14対2 大分(大分)、常総学院(栃木)11対0 近江(滋賀)の大勝が効いている。
西日本勢では嘉手納(沖縄)が東西対決の最大得点差を記録。1回戦で前橋育英(群馬)を10対3で下した7点差勝利が西日本勢最大の値だった。
【東西対決・安打数】
東日本:221安打
西日本:212安打
安打数でも東日本が僅差9本のリード。立役者は木更津総合(千葉)のエース・早川隆久だろう。初戦の唐津商(佐賀)をわずか2安打に封じ込め、続く広島新庄(広島)戦も被安打3で2試合連続完封を果たした。
【東西対決・本塁打数】
東日本:14本
西日本:7本
西日本出身者としては悔しいばかりだが、本塁打数も東日本勢の勝利。とくにかっ飛ばしまくったのが、盛岡大付(岩手)だ。3回戦で敗れてしまったが、1回戦からの3試合すべてが東西対決で5本の本塁打を聖地のスタンドに叩き込んだ。なかでも4番・塩谷洋樹は2本塁打を放つ大活躍だった。
その盛岡大付を破り、8強進出した鳴門(徳島)も負けてはいない。大会初日、開幕試合の初回に4番・手束海斗が先制2ランを描くと、3回戦では6番・中山晶量、1番・日野洸太郎の2本塁打で西のパワーを見せつけた。実は中山は夏の大会前にはベンチメンバーからも外れ、応援の太鼓担当。まさにどこからでも本塁打が出る打線を象徴する存在だ。
【東西対決・盗塁数】
東日本:16盗塁
西日本:15盗塁
盗塁数も東日本がリード。ここでも盛岡大付が大活躍の7盗塁。とくに2番・菅原優輝は毎試合の3盗塁と走りまくった。
その盛岡大付を相手に負けじと機動力を見せたのは創志学園(岡山)。敗れはしたが、3回戦までの東西対決では最多の1試合4盗塁を決め、ダイナミックに試合をかき回した。
【東西対決・奪三振数】
東日本:133奪三振
西日本:131奪三振
奪三振も東日本優勢。松井裕樹(現楽天)のような飛びぬけたドクターKはいないものの、木更津総合・早川の2試合17奪三振や、作新学院(栃木)の今井達也が尽誠学園(香川)から奪った13三振などがリードを創出している。
また奪三振で「逆に」すごかったのは常総学院(茨城)のエース・鈴木昭汰。3回戦では強豪・履正社(大阪)を相手に3失点完投勝利。実はこの試合、鈴木は奪三振ゼロだった。まさに粘りの投球と粘りの打撃のぶつかり合い。三振に注目が集まりがちな甲子園だが、鈴木のような「勝てる投手」も見ごたえありだ。
3回戦までは勝敗だけではなく、多くのデータで東日本勢に軍配が上がった東西対決。
決勝まででこのデータがどう変化するのかは全く予想がつかないが、意外にも大差はつかず、西も東も実力伯仲。地域格差がなくなりつつある現状を象徴する結果が出たのかもしれない。
文=落合初春(おちあい・もとはる)