松坂フィーバーに沸いた1998年夏の甲子園。この大会の選手宣誓は横浜の主将・小山だった。前述の通り、この大会の優勝校は横浜。小山は選手宣誓をして、深紅の優勝旗も手にする「ダブルの栄誉」を勝ち取ったのだ。
同一大会で選手宣誓を行い、優勝旗も手にしたのは小山で8人目だった。その後は、2015年のセンバツでの敦賀気比・篠原涼主将が9人目となっている。
小山の現役生活は4年間と短かったが、引退後もブルペンキャッチャーとして2009年のWBCに帯同。優勝したときには、ブルペンキャッチャーながら胴上げをされた。高校時代からのキャプテンシーで投手陣の信頼を得ていたのだ。
つい先日、遅刻でスタメンを外れたと報道されたヤクルトの西田も選手宣誓の経験者だ。
2010年、北照で又野知弥(元ヤクルト)とバッテリーを組み、センバツに出場。この大会で選手宣誓を行い、北照は初のベスト8進出を果たした。そして、西田と又野は道内初の「同一ドラフトで同一校からの2人指名」となった。
残念ながら又野は引退してしまったが、西田は捕手と一塁手の二刀流でレギュラー獲りを目指している。
藤浪晋太郎(阪神)が春夏連覇を果たし、松井裕樹(楽天)が1試合22奪三振を記録した2012年の夏の甲子園。この大会で選手宣誓を行ったのが酒田南の下妻だった。
東日本大震災から1年5カ月が経過していたこの大会。東北出身の下妻は、東日本大震災からの復興を織り交ぜた宣誓で、人々の心を打った。下妻が東北の球団、楽天に入団したのも何かの縁なのだろうか。
楽天入団後の下妻は、嶋基宏(楽天)がいるために出番は少ないが、次代を担う捕手となるべく2軍で修行を積んでいる。東北に対する思いを胸に、1軍で活躍する日を早く見たいものだ。
選手宣誓を行った選手のポジションに注目することはあまりないだろう。ちょっと違った視点で甲子園の開会式を見るのもまた面白い。そこに新しい気づきがあり、野球好きの会話は広がっていくのだ。
文=勝田 聡(かつた さとし)
松坂世代のひとつ上にあたりサッカーの黄金世代となる1979年生まれ東京育ち。プロ野球、MLB、女子プロ野球、独立リーグと幅広く野球を観戦。 様々な野球を年間約50試合現地観戦し写真を撮影する。プロ野球12球団のファンクラブ全てに入会してみたり、発売されている選手名鑑を全て購入してみたりと幅広く活動中。