渡米5年目のシーズンをワールドシリーズ制覇という結果で終えたカブスの川崎宗則の去就が、いまだ不透明だ。オフに入って日本のテレビ番組に出演する機会も増えており、そのなかで、当然ながら来季の話題を振られることも多いが、いずれも明言は避けている。
カブスは頂点に立ったが、川崎自身のメジャーでの出場は14試合にとどまり、渡米後ワースト。ポストシーズンでも出場登録は見送られた。
ただ、出番は少ないながらも打率は.333(21打数7安打)、出塁率も.462と、グラウンドに立てば、まだまだやれるところを示している。そしてポストシーズンでも、全試合でチームに帯同。ベンチでの盛り上げ役を買って出て、ナインを支え続けた。
(写真はブルージェイズ時代のもの)
カブスのフロントからは、その明るい性格と献身的な態度を評価され、来季もぜひプレーして欲しいとラブコールが送られている。
一方の日本国内の球団、特に古巣のソフトバンクからは、王貞治球団会長、工藤公康監督らが復帰を熱望するコメントを出している。
単純に年俸だけを見るなら日本球界だろう。ソフトバンクは3年12億円という好待遇を用意しているとの報道もある。しかし、金銭面に重きを置かないのが川崎。いかにやりがいを見出せるかがポイントとなっているのかもしれない。
先日、メキシコ、オランダを相手に強化試合を行った侍ジャパン。3勝1敗と勝ち越したが、そのうち2試合は延長・タイブレークでなんとか勝ちを拾ったもので、流れひとつでどうなっていたかわからない4試合だった。
その理由のひとつが、やりくりに手を焼いた内野手だ。特に三塁には、松田宣浩の調子がイマイチだったこともあり、お試しの意図もあったのだろうが、山田哲人が入るという苦肉の策がとられた。
もちろん、1番打者として起用した山田の打撃も期待してのことだが、この試合で山田は4打数無安打。慣れないポジションで気を使った面もあったのかもしれない。
こんなときに、内野ならどこでも守れて、メジャー使用球にも慣れている川崎がベンチにいれば、選択肢はグンと広くなる。スタメン起用でも、終盤での守備固めとして重宝するだろう。さらに、小技もうまく、足もあるだけに、代打、代走としても使える。もちろん持ち前の元気さで、川崎がベンチにいるだけでチーム全体の安心感が違ってくるはずだ。
それに加えて、アメリカでプレーしている選手が多く参加するであろう北中米の代表チームとの戦いでは、情報面でも大きな役割を果たすに違いない。
そして、なにより「世界一」のムードメーカーとして、これ以上ない存在感を発揮してくれるだろう。指揮官は、かつてのチームメイトで気心の知れた小久保裕紀監督でもある。
川崎は、出演したテレビ番組の中で、小久保監督と会う予定があるとも話した。WBCに出場するには、選手派遣に積極的ではない球団もあるメジャーよりは、日本の球団に所属していたほうが出やすい。
日本か? アメリカか? ソフトバンクか!? カブスか!? 年内にも方向性を出すとも言われている川崎。その動向から目が離せない。
文=藤山剣(ふじやま・けん)