今年のセンバツ大会は、大阪桐蔭と履正社による大阪同士の決勝戦が行われ、大阪桐蔭が優勝した。今夏も大阪はこの2校が優勝候補の筆頭と言われている。
ほかの都道府県であれば、春季大会の結果にもよるが、両校はシードされて然るべき。しかし、大阪はシード制を採用していない。強豪校であっても公平に抽選される。そのため2015年には、初戦で大阪桐蔭と履正社が戦うということも起きている。
1回戦から3回戦まで勝ち進んだ後は、そこでまた抽選。5回戦を勝ち進んだら準々決勝の抽選が待っている。先をなかなか読みづらいのが特徴だ。大阪大会を制するには、最高8回勝利しなければならない。
筆者が観戦したのは7月15日の豊中ローズ球場、関大北陽と市岡の1回戦での対戦だ。
市岡はセンバツに11回、夏の選手権に10回出場している。1916(大正5)年の第2回選手権大会では準優勝を果たした古豪だ。帽子の三本線は有名で、今も受け継がれている。卒業生には、日本高等学校野球連盟の会長を務め、野球殿堂入りした佐伯達雄氏がいる。
対する関大北陽は、センバツに8回、夏の選手権に6回出場経験のある「私学7強」の1校である。1970年第42回センバツでは準優勝を果たした。卒業生には、阪神とオリックスでプレーし、両球団の監督も務めた岡田彰布氏がいる。
市岡は1995年の春、関大北陽は2007年の春以来、甲子園への出場がない。夏に限っては、市岡は1940年、関大北陽は1999年が最後の出場となっている。
試合は、土曜日の朝9時からスタンドはほぼ満員の状態だった。さすがに有名校同士の試合である。選手の関係者やOBたちが多く集まっているようで、あちらこちらであいさつが交わされている。こういう雰囲気は、試合前の緊張感から解き放たれていい感じである。
市岡の先攻で試合開始。1回裏、関大北陽がエラーで出塁した走者をタイムリーヒットで還して1点を先制。2回表、市岡は3本のヒットで2点を取り、逆転した。
関大北陽は7回裏の攻撃で、2死二塁からタイムリーヒットで同点に追いついた。8回裏には1死二、三塁から暴投で1点の勝ち越しに成功。9回の市岡の攻撃を抑え、3対2で勝利した。市岡は4回と8回に二死満塁のチャンスがあったが、いずれも凡退。惜しいゲームを落とした。
大阪の高校野球界は、1980年代から2000年代までは「打倒・PL学園」だったが、今は「打倒・大阪桐蔭、履正社」へとシフトした。今夏、その2強を追うのは、春季大阪府大会2位、3位の大体大浪商、東海大仰星(※)。昨年の秋季大阪府大会優勝の上宮太子も有力校だ。そこに昨年夏の大阪大会で大阪桐蔭を下した関大北陽も加わっている。
甲子園を観るより面白いかもしれない大阪大会から目が離せない。
(※編集部注 東海大仰星は3回戦で大冠に4対8で敗退)
文=矢上豊(やがみ・ゆたか)
関西在住の山本昌世代。初めてのプロ野球観戦は、今はなき大阪球場での南海対阪急戦と、生粋の関西パ・リーグ党。以来、阪急、オリックス一筋の熱狂的ファン。プロ野球のみならず、関西の大学、社会人などのアマチュア野球も年間を通じて観戦中。