2015年の“セ界王者”として開幕を迎えたがよもやの3連敗スタート。しかも、顔ぶれが変わったとはいえ、昨シーズンは鉄壁だったリリーフ陣が打たれての敗戦。古くからのヤクルトファンは「今シーズンはやばそうだな」と思いながらも、少しだけ楽観していた。
振り返ると、1992年のヤクルトは昨シーズンと同じく14年ぶりのリーグ優勝。そして、翌1993年は開幕3連敗から始まるもリーグ連覇を達成。この符号を吉兆ととらえていたからだ。
しかし、ことはうまく運ばず投手陣崩壊、ケガ人続出で連覇はおろかCS進出も危ない9月を迎えることになった。
今年の広島、昨年のヤクルトを見ても、優勝するチームはケガ人を出さないものだ。優勝するために重要なことは“強打の打線”でもなく“鉄壁のリリーフ陣”でもなく1年間ケガなく戦うことなのだろう。
開幕戦で新外国人選手のギャレットが4番に座った。“来日1年目の新外国人選手の開幕戦・4番”は、長い巨人の歴史の中でも初めてのこと。“由伸ジャイアンツ”は昨シーズンの王者・ヤクルトに3連勝し、次カード初戦を加え4連勝と絶好のスタートを切った。
昨年までで、巨人の“開幕4連勝スタート”は10度あり、そのうち9度は優勝している。この吉兆データを見ると、巨人が優勝する可能性は高いとも思われたが…。
もう少しデータを紐解いてみると、開幕4連勝を決めながら優勝できなかった“過去の1度”は、高橋由伸のルーキーイヤーだった。そして、2度目のケースとなった今シーズンは、奇しくも高橋由伸の監督初年度に訪れてしまった……。
さて、巨人はCSで巻き返すことができるだろうか。
阪神はドラフト1位ルーキーの高山俊が球団史上初の“新人開幕4戦連続安打”を放ち、チームも2勝1敗の好スタートを切った。高山、横田慎太郎の1、2番が開幕カードで早くも結果を出し、金本知憲新監督が掲げる「“超変革”ここにあり!」といったスタートに見えたが、それも長くは続かなかった。
開幕戦でマスクを任された遅咲きの苦労人・岡崎太一も夏場を過ぎた頃には出番がなくなっていた。広島の緒方孝市監督が就任2年目で結果を出したように、金本監督も来年には結果を残せるだろうか。ホンモノの超変革を見せて欲しい。
9月10日にセ・リーグ制覇を果たした広島。昨年のヤクルトが優勝を決めたのが10月2日だったことを考えると圧倒的なスピード決着だ。ヤクルトはマジック点灯ですら9月27日だったのだから、もはやそのペースは異次元といっていい。
そんな広島の開幕カードは、開幕戦こそ落としたもののその後2連勝と幸先良いスタートだった。今シーズンの初勝利を挙げたのは黒田博樹、優勝を決めた試合も黒田、つまり黒田に始まり黒田に終わったわけだ。
開幕カード3戦目での勝利投手は、ルーキーのオスカル。この勝利は“2016年ルーキー最速勝利”となった。開幕前に一番早く初勝利を挙げるルーキーがオスカルと予想していた人はいただろうか? と、いうくらい予想外な最速勝利だった。
こういった全員野球も広島優勝の原動力となったのだろう。
ビシエドが新外国人選手として史上初の開幕から3戦連続本塁打。“ビシエド旋風”が巻き起こった。ビシエドは開幕カードで打率.615、3本塁打、6打点と現役メジャーリーガーとしての力を存分に見せてくれた。
最下位が目前となってしまった今、「そんなこともあったなぁ」というのが中日ファンの感想だろう。
チーム内の状態がよくないと報道されているが、来シーズンへ向けてどう舵を取るのかが注目される。
DeNAは開幕から新人たちが躍動した。戸柱恭孝が球団史上初の“ルーキー開幕マスク”をかぶると、柴田竜拓は開幕戦でプロ初打席初安打初打点を記録し、全打点を叩きだした。DeNAのルーキーでは、ドラフト1位の今永昇太が取り上げられることが多い。しかし、DeNAの今シーズンは柴田と戸柱から始まったのだ。
柴田は5月2日に抹消されて以来、1軍に戻ってきていない。開幕戦で躍動した男はCS争いの最後のピースになれるのか。
シーズンが終わってしまうと開幕カードを振り返る機会は少ない。どうしても来シーズンの話題で盛り上がってしまいがちだからだ。だからこそあえて、この時期に開幕カードを振り返ってみた。
開幕カードから各チームに様々な出来事があったことがよくわかる。読者の方もたまには贔屓チームの“今シーズンの始まり”振り返ってみてはいかがだろうか。意外なことを思い出されるかもしれない。
文=勝田 聡(かつた さとし)