■セ・リーグ投手:ブレイク候補@
柳裕也(中日)
2016年のドラフトで、当時4年連続Bクラスに低迷していた中日が救世主として1位指名したのが柳裕也。DeNAとの競合の末に即戦力と目される大卒右腕を獲得できたことで、ローテーションの一角は埋まったかと思われた。
しかしプロの壁は厚く、昨季の柳は7度の先発機会を与えられながら1勝(4敗)止まり。同期入団の京田陽太がブレイクしていたため、「自分もやらないと」というプレッシャーがあっただろうが、期待値から見ると一抹の寂しさが漂うルーキーイヤーとなった。
とはいえ、大学時代に磨き上げた実力は間違いない。2月17日の巨人との練習試合では3回を無失点。プロの空気に慣れれば一気に化けるはず。2年目の柳に期待大だ。
■セ・リーグ投手:ブレイク候補A
加藤拓也(広島)
柳(中日)と同じく2016年のドラフト1位で広島に入団した加藤拓也も、大爆発が待たれる投手の1人。ルーキーイヤーとなった昨季は、あわやノーヒットノーランの快投で初勝利を挙げたものの、インタビューの態度を問題視されるなど、プレー以外の部分で目立ってしまった。
そんな加藤には今季、是が非でもブレイクしなければいけない理由もある。オフに結婚したからだ。結果を残さないとパートナーにまでいらぬ火の粉が降ってきてしまう。
かつて黒田博樹(元広島ほか)を見出した苑田聡彦スカウト統括部長の肝いりで指名された経緯を見ても、加藤が秘めたポテンシャルは人一倍。家族のためにもスカウトのためにも、真の力を見せたい。
■セ・リーグ投手:ブレイクB
寺島成輝(ヤクルト)
2016年の高校ナンバーワン左腕の触れ込みで、ヤクルトに1位入団した寺島成輝。1軍の台所事情が苦しいヤクルトだけに起用法が注目されたが、故障もあり、8月までは2軍でも公式戦出場はお預けとなった。
その後、故障が癒えてからは2軍で6試合に登板し、0勝(1敗)ながらも防御率2.37と健闘。9月30日には待望の1軍デビュー。しかし、プロの洗礼を浴びて3回5失点でノックアウトされた。
ほろ苦いデビューとなったが、シーズン最終盤に1軍の打者の雰囲気を感じ取れたのは収穫だったという。試合後の「次に生かせる」というコメントは、単なる負け惜しみだけではなさそうだ。
ちなみに出身校の履正社は近年、山田哲人(ヤクルト)やT-岡田(オリックス)と大打者を輩出している。一方投手では、岸田護(オリックス)以来、プロ入りする選手さえいなかった。母校の「プロ輩出の系譜」に新たなページを作る活躍が待たれる。
実力はあっても、それだけで活躍できないのがプロ野球。今回紹介した3人は「1年目に1軍のマウンドを経験した」という経験が今後の役に立つはず。
願わくば、揃ってブレイクしてほしいところ。それだけのポテンシャルを秘めた3人の今季を、楽しみにせずにはいられない。
次回のブレイク候補選手は、パ・リーグの野手を見ていこう。乞うご期待!
文=森田真悟(もりた・しんご)