この5年間で最も成長したのは現在のチームの顔・筒香嘉智だろう。横浜高時代から長距離打者として鳴らた筒香は、DeNA発足初年度の2012年に108試合に出場。10本塁打を放ち台頭した。2014年には打率.300、22本塁打、77打点と大きく飛躍する。
そして昨季、中畑前監督からキャプテンに任命されると、開幕戦から4番に座り主軸として活躍。成績も打率.317、24本塁打、93打点と前年を上回り、リーグを代表する強打者と認知された。シーズン後のプレミア12でも侍ジャパンの中心打者として名を連ね、オフシーズンはドミニカのウインターリーグに参加。さらなる高みを目指した。
今季も好調を保ち、9月13日のヤクルト戦では自身初の40本塁打に到達。本塁打、打点でリーグトップと初のタイトル獲得に向けて邁進し、DeNA打線をけん引している。
またDeNAの発足初年度に、中畑前監督が「レギュラーを張る選手に育てたい」と熱い視線を送っていたのが、当時プロ6年目の内野手・梶谷隆幸だった。
試合に出場するもミスが相次いだ梶谷だったが、2013年にはケガから復帰した後半戦にバッティングが覚醒。規定打席は届かなかったが打率.346、16本塁打と結果を残した。
2014年には外野手にコンバートされ、自慢の俊足で盗塁を重ねていく。終わってみればプロ入り初めて1シーズンでレギュラーを張り、39盗塁で盗塁王を獲得。目を掛けてきた中畑前監督の期待に応えた。
打者では筒香、梶谷が成長した一方、DeNAがずっと課題として抱えていたのは「先発左腕」だった。そんな状況のなか、今季台頭したのがプロ2年目の石田健大とルーキー・今永昇太だった。
法政大からプロ入りした石田は1年目の昨年、 2勝6敗の結果に終わる。しかし今季は開幕から先発ローテーションに入り、5月には4勝0敗、防御率0.33、自責点はわずか1という圧巻の投球で月間MVPを獲得した。9月19日時点で9勝4敗とし、2ケタ勝利を目前としている。
一方、昨秋のドラフト1位で入団した今永はシーズン序盤、好投は見せるもなかなか打線が援護できず、勝ちがつかないもどかしい登板が続いた。それでも黙々と投げ続けた今永は5月6日の広島戦で7回無失点の好投を見せ、待望のプロ初勝利を挙げる。
この勝利で勢いづいた今永はその後5連勝と勝利を重ね、チームの躍進に貢献した。CS進出を決めた9月19日の広島戦にも先発し、7回途中1失点と先発投手の役割を果たしている。
そして忘れてはならないのは、横浜スタジアムに多くのファンが訪れるようになったことだろう。DeNAが経営に参入して以降、初年度に行ったチケット代返金企画「全額返金!? アツいぜ! チケット」に始まり、球界初の試みとなったドキュメンタリー映画『ダグアウトの向こう』の上映。地元・横浜に密着した「I☆YOKOHAMA」の活動など、以前にはなかった斬新な企画・アイデアで多くのファンを取り込んできた。
さらに今季は球団が本拠地・横浜スタジアムの運営会社を買収し、「ボールパーク構想」を打ち出した。球団オリジナルのビール販売も始まり、さらなる進化を遂げている。
観客動員数も年を追うごとに増えていき、今季は日本一となった1998年を上回る球団史上最多を記録した。今後もDeNAの躍進とともにファンを楽しませる仕掛けも楽しみだ。
文=武山智史(たけやま・さとし)