能見篤史(阪神)は、2014年から「1勝につき10万円分の玩具」を兵庫県西宮市と故郷・豊岡市の施設へ贈っている。
西宮市は阪神のホームグラウンド・甲子園球場が所在する阪神の本拠地。ここらからも能見の地元意識の高さがうかがえる。
ちなみに阪神は、「社会貢献活動並びにファンサービス活動におけるプロ野球界のパイオニア」だったOB・若林忠志氏の功績を称えた「若林忠志賞」設けており、今年は能見が同賞を受賞した。
西武で熱心に社会貢献活動をしているのは栗山巧、炭谷銀仁朗、秋山翔吾の3選手。
【栗山巧】1安打ごとに1万円を被災地に寄付
【炭谷銀仁朗】先発マスクでチームが勝利を挙げるごとに1万円を難病の子どもたちに寄付
【秋山翔吾】ひとり親家庭で育った自身の経験を元に、ひとり親家庭の家族を西武プリンスドームに招待
このように三者三様のスタイルで、社会とのつながりを大切にしている。
日本を飛び越えて、世界の子どもたちに手を差し伸べているのが和田毅(ソフトバンク)だ。
プロ3年目の2005年から、「認定NPO法人 世界の子どもにワクチンを 日本委員会」のスペシャルサポーターとして支援活動を開始(メジャーリーグ移籍期間は中断)。
「公式戦での投球数1球につき、10本のワクチンを寄付」しており、さらに「勝利投手になった場合は1球につきワクチン20本」「完封勝利なら1球につき40本」と結果に合わせて支援度がレベルアップ。
自分が活躍すればするほど救われる子どもたちが増える。そんな思いが自らを奮い立たせることにつながっているのだ。
ここまでは主に「子どもたちへの支援活動」に取り組む選手を取り上げたが、苦難を抱えた大人を対象にした社会貢献活動をしている選手もいる。その1人が田中賢介(日本ハム)だ。
田中は、乳がんの早期発見・早期治療の大切さを伝える「ピンクリボンプロジェクト」を通じて、現在は「ヒット1本につき、乳がんの診断を行うマンモグラフィー検診料を2人分寄付」している。
田中がピンクの野球用具を身に着けていたことがきっかけになり、2008年からこの支援活動をスタート。昨シーズンまでに2372名分の検診料を届けてきた。
現役時代に熱心な支援活動を行っていたOBとして、記憶に残っているのが赤星憲広さん(元阪神)。
足に病を抱えていたファンとの出会いがきっかけとなり、赤星さんは2003年から7年にわたって「盗塁1つにつき車椅子1台を、全国の施設や病院に寄付」という活動を行った。
その結果、301台の車椅子を寄贈。現在は「Ring of Red 〜赤星憲広の輪を広げる基金〜」を設立し、車椅子をプレゼントし続けている。
西武の秋山のように自らの生い立ちを踏まえた支援活動もあれば、日本ハムの田中のように偶然とも思えるつながりから生まれる支援活動もある。本稿を執筆するにあたり調べていくうちに、あらためて様々なケースがあるのだと感じさせられた。
また、1999年からは、日本のプロ野球人の社会貢献活動優秀者に贈られる「ゴールデンスピリット賞」も設けられた。今回、紹介した選手では栗山、和田、赤星が受賞している。
社会貢献活動をするプロ野球選手はまだまだいる。次回は「ゴールデンスピリット賞」のほかの受賞者を紹介していきたい。
文=森田真悟(もりた・しんご)