ここ最近、王貞治ソフトバンク会長らがNPBの16球団構想について語る機会が増えた。現状の12球団から4球団を増やし、プロ野球界をさらに盛り上げようという狙いだ。
既存球団の利益や選手の調達、選手数の増加による一定期間のレベル低下など複数の問題が絡み合うのは承知の上で、仮に16球団となったらどうなるのかを考えてみた。
16球団になった場合、どこの地域に新たな球団ができるのかで様相が大きく変わってくる。
人口規模だけでなくNPBの1軍の試合が開催できる球場、アクセス状況、そして政治とさまざまな要素が絡んでくるものの、現実的な候補としては栃木・宇都宮市、静岡・浜松市、新潟・新潟市、京都・京都市、岡山・倉敷市、愛媛・松山市、沖縄・那覇市といったところだろうか。
また、資金、施設、移動などハードルはかなり高いため、ウルトラC的なアイデアではあるが台湾や韓国のチーム(連合含む)という案もある。ラグビーのサンウルブズのようなイメージだ。
もちろんオーナー企業が当該都市にあれば理想だが、そうでなくても問題はない。現に2005年から加わった楽天は、元から仙台に本社があったわけではない。参入がほぼ決まってから株式会社楽天野球団を仙台に設立している。後の対応でも参入の障壁にはならないだろう。
とはいえ、地元企業であれば、より多くの支援があることは間違いない。主要都市の大企業が手を挙げてくれると王会長らが望む地域の活性化につながってくる。
現在の12球団とのバランスを考えると、新潟市、静岡市もしくは浜松市、松山市、那覇市の4都市がしっくりくる。
新潟市であればハードオフエコスタジアム、静岡市は草薙球場、浜松市は浜松球場、松山市は坊っちゃんスタジアム、那覇市は沖縄セルラースタジアム那覇と1軍の試合が開催された実績のある球場もある。
静岡市、浜松市の2球場はキャパ数が3万に満たないものの、参入後に改修・増席すればクリアできるはずだ。
問題なのは交通アクセスだろうか。現在は年に数回の開催であり、あまり気にならないかもしれないが、日常的に試合が開催されることとなれば、車社会とはいえ最寄り駅から徒歩15分圏内でないとなかなか厳しいものがある。また、臨時列車含めそれなりの本数は必要だろう。
日本ハムが新規で建設している北広島のエスコンフィールド北海道でも、JR北海道の新駅ができる予定。新規球団ができるとなれば、足回りの整備も必要になってくるのである。オーナー企業がいる前提であれば、集客を考えても交通アクセス、これが課題となってくる。
16球団になった場合、現在のような2リーグ制ではなく「4チーム×4地区」のフォーマットになることが濃厚だ。
そうなるとポストシーズンの組み合わせももちろん変わってくる。様々な案はあるだろうが、地区優勝の4チームに加え勝率の高い2チームをワイルドカードで選出し、合計6チームで争うパターンはどうだろうか。
■クオーターファイナル
※3戦先勝(5試合制)
※ホームアドバンテージは地区優勝チーム
地区優勝C(勝率3位)×ワイルドカードB(勝率2位)…@
地区優勝D(勝率4位)×ワイルドカードA(勝率1位)…A
■セミファイナル
※4戦先勝(7試合制)
※ホームアドバンテージは地区優勝A、B
地区優勝A(勝率1位)×Aの勝者…B
地区優勝B(勝率2位)×@の勝者…C
■ファイナル
※4戦先勝(7試合制)
※ホームアドバンテージは地区優勝A、B、C、D、ワイルドカードA、Bの順
Bの勝者×Cの勝者
16チーム中6チーム(37.5%)がポストシーズンへと進むことになり、現在の12チーム中6チーム(50%)よりも価値は上がる。また、勝率5割未満のチームが勝ち上がることはほとんどなくなるだろう。
もちろんワイルドカードをなくし、地区優勝の4チームで争うケースもありだろう。
現状、NPBでは降格制度がないため、優勝なりワイルドカードの争いがないと終盤はダレてしまう。地区内での消化試合をなるべく少なくするためにも、ワイルドカード争いがあったほうがいいはずだ。
とはいえ、「地区優勝じゃなくても日本一になれるのはおかしい」という声があがることは間違いない。そこは慣れるしかない。
また、地区分けは重要になってくる。新規球団の4チームは各地区にバラけさせないと、数年間は不公平が生じてしまうため、バランスも新規球団設立の際に考えなければならないのである。
かつてのプロ野球チームは親会社の広告塔であり、赤字体質が当たり前だった。しかし、近年は球場とセットで考えたり、ネットを利用した施策であったりと多くの球団が黒字転換している。
この流れが続けば、球団経営に興味を持つ企業が増えてもおかしくはない。はたして1958年から60年以上も続いている2リーグ12球団制が変化するときは訪れるのだろうか。
文=勝田聡(かつた・さとし)