巨人1位 鍬原拓也・コンビネーションが魅力の150キロ超速球派右腕
2017年プロ野球ドラフト会議で、総勢82名の選手が指名された。
2018年からのプロでの活躍に期待したい。
週刊野球太郎では、ドラフト会議の直前にインタビューした指名選手18名を特集!
プロで活躍するために戦ってきたドラフト候補と、彼らの「真価」を最も熟知している監督さんを取材した貴重な「証言」をお届けします。
今回の指名選手
巨人 ドラフト1位
鍬原拓也(くわはら・たくや)
176センチ75キロ/右投右打。1996(平成8)年3月26日生まれ、奈良県御所市出身。ホワイトイーグルスで野球を始め全国大会16強入り。橿原磯城リトルシニア時代は二枚看板の一角としてジャイアンツカップ3位入賞。北陸高では甲子園出場なし。中央大では1年春から登板機会を得て3年春の途中から先発に定着。今春は自己最多の4勝をマークした。
清水達也監督の証言
★最初の印象
「器用な選手だな」ということですね。いろんな球種を投げていましたし、手先が柔らかそうな印象でした。速球派でありながら球種がたくさんあるだけに「スピードボールをもっと投げればいいのに」とは思っていました。
★成長
当初は小手先で細工している感じがあったのですが、それがだんだん体全体を使って投げるようになり、フォームの再現性が出てきました。また、上を目指すからには一生懸命野球に取り組むのは当然ですが、その姿勢が、ひと段階大人になってきた気がします。
★先発で試合を作る自覚
去年の春にリリーフから先発に回ったことで役割が明確になり、本人も何をすべきか感じられるようになりました。それまでは迷いながらモヤモヤしていたと思いますが、「先発して試合を作るんだ」という自覚が出てきました。
★4年になってからの成長
去年の春に入替戦を経験して、そこで完封勝ちをしたり、きつい状況の中で「フィールディングや牽制、マウンドさばきができないと勝てない」と感じたことで、4年になってからも成長が見られるようになりました。
★武器
シンカーが勝負球としてもカウント取る球としても使えるようになってきて、ストレートもより生きるようになりました。でも、ストレートが一番の武器ですよね。打者からすれば「速いな」と意識するだけで、全然違いますから。
★今年から投手コーチが就任
今年から平田幸夫(元河合楽器)が常任の投手コーチとして就任して安心感を得たと思います。昨年までは投手コーチがいなかったので、自分だけでやっていて不安なところもあったでしょうから。
★これから
試合を作り、ベンチや仲間から信頼されるピッチャーになってほしいですね。そうした信頼は野球だけじゃなくて、私生活など普段の行動から生まれてくるものですので、今後もそこをしっかりと取り組んでほしいと思います。
監督さんプロフィール
清水達也[しみず・たつや]
1964(昭和39)年生まれ、埼玉県出身。上尾高〜中央大。現役時代は内野手。上尾高でセンバツに出場、河合楽器で都市対抗11年連続出場。1999年から中央大監督。2008年からコーチ、2017年から監督に復帰。
本人の証言
★この夏取り組んだこと
この夏は、球数を減らして早いカウントで打たせて取ることをテーマとしています。秋の日程を見ると3週連続で試合が続くことがあり、どうしても連投したり、登板間隔が短くなるので、そのために球数を減らして、長いイニングを投げることをテーマにしました。
★大学での成長
物事を考える力がつきました。高校まではストライクゾーンが広いということもありますし、ボール球も振ってくれました。それが大学で見極められて、苦しんだ時期もありました。
★子どもと大人の分かれ目
人間として一番変われたのは3年春の入替戦が終わってからです。子どもだった自分と大人になった自分の分かれ目でした。投手陣の調子が上がらない中で先発を任され、当時、コーチだった清水さん(現・監督)にも「お前がやらないとチームが勝てないんだ」とずっと言われて、自覚が出てきました。そこで長いイニング投げるために「ペース配分を考えよう」と打撃投手をやっていたら、空振りや詰まった打球にできたので、「力を抜いても球はいくんだ」と感じられました。
★武器と課題
武器はストレートとシンカー、スライダーのコンビネーションだと思っています。課題は初回の立ち上がりがまだ不安定なので、立ち上がりをどう3人で抑えるのか。あとは球数を減らすことですね。
★これから
もう1つ変化球が欲しいとは思いますが、自分のスタイルを変えずに、周りに流されないようにして、日々の練習に取り組んでいきたいです。野球少年に「鍬原みたいになりたい」と思ってもらえるピッチャーになるのが夢です。
球種に関する証言
ストレート 140 〜 152キロ
スライダー 125 〜 135キロ
シンカー 120 〜 128キロ
フォーク 130 〜 138キロ
カーブ 100 〜 115キロ
やっぱりストレートあっての変化球だと思います。そこは変えたくないですね。変化球ではサイドスローだった中学時代に習得したシンカーが武器です。今はカーブで緩急をつけられるよう練習しています。(本人)
フォームに関する証言
監督
かなりまとまってきました。でも走者が出たり、相手が格上の時に力が入ってフォームの開きが早くなったりするので、そこは修正点ですね。
本人
下級生の頃に比べて、全力で投げていないように見えて、球がいくようになってきました。ある程度、脱力できるようになって球質がよくなりました。あとは、立った時に腰が反ると体が開いてしまうので、まずしっかり立つということを意識しています。
グラウンド外の素顔
取材に快く応じ、球場で会えば気持ちよく挨拶してくれる鍬原だが、中学時代は少々ヤンチャで道を外れかけた時代もあった。高校で野球をするつもりも無かったほどだったが、女手ひとつで育ててくれた母・佐代子さんから「野球を続けてほしい」と懇願されて今に至る。その感謝の気持ちからヤンチャな面影は消え、好奇心旺盛な性格そのままに、大学3年時から読書が趣味になるまでとなった。
本稿は雑誌『野球太郎 No.024 2017ドラフト直前大特集号』(2017年9月23日発行)に掲載された人気企画「ドラフト候補&指導者マンツーマン・インタビュー」から、ライター・高木遊氏が執筆した記事をリライト、転載したものです。
取材・文 高木遊
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