年の瀬となり、今年も残すところあとわずかとなった。各チームの編成もいよいよ最終段階に近づいてきている。FA選手の移籍先も全員が決まり、残すは新外国人選手の補強があるかどうか、といったところだろうか。このオフも多くの選手が移籍したが、同時にコーチも大きく入れ替わっている。今回は新任のコーチ陣をチェックしたい。
球団史上ワーストとなる4年連続で優勝を逃した巨人は、このオフに高橋由伸監督から原辰徳監督へスイッチした。高橋監督の前にチームを率いていた原監督に低迷からの再建を任せたのだ。原監督は就任するとすぐに動いた。炭谷銀仁朗、中島宏之、ビヤヌエバ、丸佳浩、岩隈久志と次々に補強を行い、優勝への準備を着々と進めている。
原監督が刷新を図ったのは選手だけではない。コーチ陣も大幅に入れ替えたのだ。なかでも宮本和知氏(投手総合コーチ)、鈴木尚広氏(外野守備走塁コーチ)、元木大介氏(内野守備兼打撃コーチ)、相川亮二氏(バッテリーコーチ)と指導者経験がない4人を1軍のコーチに招聘したことは話題を呼んだ。
鈴木氏、相川氏はここ数年で引退したこともあり、経験がないのは致し方ないもかもしれない。しかし、宮本氏は1997年、元木氏は2005年に現役を退いており、10年以上も現場から離れていたことになる。外から野球を見てきた2人が、どのような化学反応を起こすのかは注目したいポイントだ。
そして、巨人の永遠のライバルである阪神も首脳陣が大きく変わった。17年ぶりに単独最下位となった責任を取り、金本知憲監督が辞任。2軍監督を務めていた矢野燿大氏が1軍監督となり、ヘッドコーチには清水雅治氏を楽天から招聘した。そして、福原忍氏、藤井彰人氏、濱中治氏、藤本敦士氏、筒井壮氏と今シーズン矢野監督がファームで苦楽をともにした5人を1軍のコーチに引き上げたのだ。
チーム内の人事異動ではあるが、1軍の選手から見れば大きく変わったように映るだろう。ファームは矢野監督の元で日本一を達成したが、1軍でも同じようにチームを勝利に導けるだろうか。
今シーズンまでの3年間を日本ハムで過ごした吉井理人投手コーチが、来シーズンからロッテの投手コーチに就任する。これまでに日本ハム(2008年〜2012年、2016年〜2018年)、ソフトバンク(2015年)とパ・リーグの2チームで合計9年間にわたりコーチを務め、ロッテは3チーム目となる。9年間で優勝は3回、Bクラスは2回だけ。もちろん、投手コーチの力だけで優勝、Aクラス入りができるわけではないが、大きく貢献したことは間違いないだろう。
吉井コーチはメジャーリーグ経験があり、なおかつ、大学院でコーチング論などを学んできた。これまでにダルビッシュ有(カブス)や宮西尚生(日本ハム)、増井浩俊(オリックス)らを育てており、その指導にも定評がある。
今シーズンのロッテは防御率4.04でリーグ5位。被安打数1289はリーグワーストと投手陣は苦しんだ。さらには、来シーズンから本拠地であるZOZOマリンスタジアムが改修され「狭く」なる。打者にとっては朗報だが、投手にとっては死活問題だ。吉井コーチの招聘で不利になった投手陣を立て直すことができるだろうか。
今シーズンはBCリーグの富山GRNサンダーバーズで監督を務めた伊藤智仁氏が、来シーズンから楽天の投手コーチに就任する。今シーズンの楽天は開幕から波に乗れず、梨田昌孝監督が6月中旬に辞任。平石洋介監督代行が残りシーズンの指揮を執った。その後、石井一久氏がゼネラルマネージャーに就任。平石監督は続投となったが、選手、首脳陣の刷新を図った。
小谷野栄一氏(打撃コーチ)、後藤武敏氏(2軍打撃コーチ)という平石監督と同じ「松坂世代」の2人をコーチに招聘。そして投手コーチにはヤクルトで2004年から2017年まで14年間に渡ってコーチを務めた伊藤智仁氏を呼んだのである。
ヤクルトコーチ時代の伊藤氏は多くの投手を手がけたが、最後の教え子であると言ってもいいのが原樹理だ。伊藤コーチが在籍していた2年間で結果は出なかったが、今シーズン後半に好投を続け、ようやく殻を破った。
楽天は則本昂大、岸孝之という2枚看板はいるが、後に続く先発投手陣はまだまだ実績が少ない。とくに藤平尚真、近藤弘樹ら近年のドラフト1位が育たないとこの先は苦しい。新たなチームで若手投手陣をどのように育てていくのか、注目したい。
(※写真は日本ハム時代の吉井理人コーチ)
文=勝田聡(かつた・さとし)