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勝手に選定! 2013年プロ野球流行語大賞

 12月2日、毎年好例の「新語・流行語大賞」が発表され、「じぇじぇじぇ」、「倍返し」、「今でしょ」、「おもてなし」の4語が大賞に選ばれた。野球界からノミネートされていた「引いたら負け」(田中将大/楽天)、「二刀流」(大谷翔平/日本ハム)、「スポーツの底力」(楽天)の3つはトップテン入りもならず…。

 と思っていたら、選考委員特別賞として楽天の日本一にちなみ、「被災地が、東北が、日本がひとつになった 楽天、日本一をありがとう」が選ばれた……えーっと、初めて聞いた言葉なんですけど……。それ以前に、田中の「引いたら負け」も、いつ使った言葉なのかピンとこない。一体どこで流行っていたのか正直疑問だ。そこでこの1年、本当に球界を賑わせた「流行語」は何だったのかを振り返り、「2013年プロ野球流行語大賞」を勝手に選定したい。

行けたら行け

 日本代表が3連覇を目指した今年のWBC。多くの人が負けを意識したのは、準決勝の終盤8回、2点を追う場面で起きた、痛すぎる重盗失敗の場面ではないだろうか。


イラスト・ながさわたかひろ

 その際に出ていたサインが「行けたら行け」だった。これに関して、「重盗で『行けたら行け』はあり得ない」、「相手捕手、モリーナが大リーグナンバーワンの強肩なのを知らないのか?」と、山本浩二監督の采配に非難ごうごう。かくして、侍ジャパンの敗戦とともに、この言葉にスポットが当たる形となった。

クイックは何秒ですか?

 一方で、球史に残る盗塁も今回のWBCで生まれている。第2ラウンドのチャイニーズ・タイペイ戦、1点ビハインドで迎えた9回2死一塁という場面で鳥谷敬(阪神)が盗塁を敢行し、日本中のファンを驚かせた。実はスタートを切る前、緒方耕一一塁ベースコーチに「(相手投手の)クイックは何秒ですか?」と確認していたことが後に明らかに。「鳥谷がスタートしているー」という悲痛な実況とあわせ、ぜひ覚えておきたい。

「ドームラン」って言うんですよ

 WBC絡みでネットを中心に賑わったのが、解説を務めた桑田真澄氏(元巨人ほか)の名文句の数々だ。特に、「ネット用語」とも言うべき「ドームラン」の名が桑田氏の口から地上波に乗った際には、お祭り騒ぎとなった。

思い出しました!

 6月5日、巨人vs日本ハム戦の延長11回裏に代打で小笠原道大が登場。その8球目を振り抜いた打球は、ライトスタンドに消えるサヨナラ3ランとなった。お立ち台に立った小笠原は、開口一番「思い出しました!」と叫び、ここに至るまでの苦闘の日々を振り返った。ドームだけでなく、小笠原の復活に期待していた全国の巨人ファンが盛り上がった瞬間だった。

私の評価は歴史がする

 6月11日、球界を大きく揺るがした「統一球問題」が勃発。シーズン開幕から3カ月が過ぎての発覚だったこと、説明が稚拙だったこともあって、事態は加藤良三コミッショナーの辞職を求める声にまで発展した。

 これに対して7月1日、加藤コミッショナーの口から飛び出たこの言葉に、呆れる人が続出した。他にも「知らなかった」、「不祥事とは思わない」など、世論から反感を買う言葉を数多く残した。

野球を楽しいと思ったことはなかった

 秋、有名選手が続々と今季限りでの引退を表明する中、宮本慎也(元ヤクルト)の引退会見で漏れた言葉は実に重たかった。名門PL学園で全国制覇を経験し、その後も同志社大、プリンスホテルで「アマチュア最強内野手」と呼ばれた。アテネ、北京五輪代表ではキャプテンにも就任。その重圧たるや、いかばかりだったか。しかし、引退試合の後には、「最後に野球を楽しく感じられた」とコメントし、ファンを喜ばせた。



最後にかっこいいパパを見せられました

 引退選手の中でもう一人、印象的な言葉を残したのが、DeNAを退団した小池正晃の最後の挨拶。自身の引退試合で、2本塁打を含む3安打と爆発した小池は、駆けつけた家族へ「今年1年、本当にかっこ悪いパパでしたけど、最後の最後にかっこいいパパを見せられました! 本当にありがとう!」と叫び、ファンの涙を誘った。


 これらの言葉に加え、単語レベルとしては「二刀流」、「加藤良三」も今年の球界流行語トップテンには入ってくるだろう。そして、今年の栄えある球界流行語大賞には、次の言葉を選びたい。

◎今年の野球界の主役は、俺たち楽天だ!
 キャンプイン後の2月11日、楽天の田中将大が恒例の声だしを行った。「おはようございます。7年目、田中将大です。今年はWBCで世界一、シーズンで日本一、この2つの頂点を目指して、そのために1年間フル回転していきたいと思います。全国の野球ファンの皆さんに言わせて頂きます。今年の野球界の主役は、俺たち楽天だ!」

 WBCでの世界一は叶わなかったものの、日本一は見事に有言実行。「予言」と言っても差し支えないメッセージ性も加味し、今年の球界流行語大賞に選定したい。


文=オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。また「幻冬舎WEBマガジン」で実況アナウンサーへのインタビュー企画を連載するなど、各種媒体にもインタビュー記事を寄稿している。ツイッター/@oguman1977

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