近年、日本のプロ野球でも多くのデータが活用されるようになった。ヤクルト監督時代の野村克也氏が「ID野球」を掲げ、その後、2004年に日本でも『マネーボール』が発売されたことで、徐々に浸透してきた結果とも言えるだろう。
それ以前は、野手で見ると打率、本塁打、打点、盗塁しか注目されていなかった。しかし、今では出塁率や長打率が当たり前のデータとして用いられ、OPSも一般的な指標となった。ほかにもWAR(※1)やUZR(※2)など簡単に計算できないデータも、インターネット上の専門サイトで閲覧することができる。
週刊野球太郎の新連載『新発見! 野球太郎的成功&失敗の法則』では、硬軟織り交ぜた様々なデータから成功、あるいは失敗の法則を導き出す。第1回となる今回はあえて複雑なデータを用いず、感覚的にわかりやすい指標で法則を導いたみたい。
(※1)WAR:チームの勝利数にどれだけ貢献したか表す指標
(※2)UZR:平均的な同ポジションの選手と比べてどれだけ失点を防いだかを表す指標
打撃の代表的な指標のひとつが打率だ。説明不要だろうが、打数に対して安打を打つ確率だ。打者の実力を測るにあたって使い勝手がよく、「安打数÷打数」でかんたんに求められるため、なじみ深い指標だろう。打席数からは犠打、犠飛、四死球、打撃妨害、走塁妨害をのぞいた打数での計算となる。
たとえば、打率3割なら10回打席に立って犠打、犠飛、四死球、打撃妨害、走塁妨害がなければ、3本はヒットをを放つということだ。
同じように「その打席で四球を選ぶ確率」指標としてBB%というものがある。馴染みが薄いかもしれないが、計算式は「四球数÷打席数」と簡単。打率と違うのは、「打数」ではなく「打席数」で計算する点だ。
今回はこの「BB%」に着目。まずはBB%の高い打者を見ていこう。
12球団の規定到達者における「BB%」ランキングは以下の通りだ。
(成績は8月14日現在)
■BB%ランキング
1位:丸佳浩(広島)/ 24.5%
2位:近藤健介(日本ハム)/ 17.2%
3位:鈴木誠也(広島)/ 16.6%
4位:山田哲人(ヤクルト)/ 16.0%
5位:西川遥輝(日本ハム)/ 15.8%%
BB%ランキングの上位には、やはり打率や本塁打のランキングにも名を連ねる選手が多い。強打者ほど相手投手も警戒した投球となり、際どいコースを突くことになる。よってボール球になるケースが増えるから強打者ほどBB%が高いのだろう。
なかでも1位の丸佳浩(広島)の数字はずば抜けている。24.5%は、およそ4打席で1個、1試合で1個の四球を得ていることになる。広島の残り試合数は43なので、現在の89四球に43を加えると132四球。これは四球数のシーズン歴代ランキングで4位に食い込む数字で、その凄さがよくわかる。
ここからは、逆の見方をしてみたい。打率ランキング、本塁打ランキング上位の選手のBB%は高いのか? という見方だ。ランキング上位者とそのBB%を見てみる。
(カッコ内の数字はBB%の順位)
■打率ランキングとBB%
1位:柳田悠岐(ソフトバンク)
打率=.349/ BB%=10.4%(23位)
2位:近藤健介(日本ハム)
打率=.337/ BB%=17.2%(2位)
3位:鈴木誠也(広島)
打率=.332/ BB%=16.6%(3位)
4位:ビシエド(中日)
打率=.331/ BB%=9.4%(32位)
5位:秋山翔吾(西武)
打率=.329 / BB%=11.6%(19位)
■本塁打ランキングとBB%
1位:山川穂高(西武)
本塁打=32本/ BB%=13.8%(10位)
2位:バレンティン(ヤクルト)
本塁打=29本/ BB%=15.5%(6位)
3位:山田哲人(ヤクルト)
本塁打=28本/ BB%=16.0%(4位)
4位:柳田悠岐(ソフトバンク)
本塁打=25本/ BB%=10.4%(23位)
4位:丸佳浩(広島)
本塁打=25本/ BB%=24.5%(1位)
4位:デスパイネ(ソフトバンク)
本塁打=25本/ BB%=12.4%(15位)
BB%が5位の西川遥輝(日本ハム)こそ打率、本塁打ランキング上位に出てこないが、その他の上位打者は軒並み名を連ねている。
これらの結果を見ると、例外はあるものの、おおむね「BB%が高い打者は、打率、本塁打どちらかに強みを持っている者が多い」と言っていいだろう。打率が高いから、あるいは本塁打数が多いからBB%が高いというわけではなく、BB%が高い打者は「優れた何か」を持つということだ。あくまでおおむねではあるが。
より深く考察するには、セイバーメトリクスなどを用いた細かい指標を考慮する必要がある。しかし、誰でも手に入るデータを簡単な計算式に当てはめるだけでも、こういった法則が導き出せるのだ。
一般的に公表されるデータから電卓、もしくは表計算ソフトで、算出してみてはどうだろうか。もしかしたら、意外な発見があるかもしれない。
文=勝田聡(かつた・さとし)