2012年の第84回大会、1回戦では大谷翔平(日本ハム)擁する花巻東と藤浪晋太郎(阪神)擁する大阪桐蔭が激突。大きな話題となった。
試合が動いたのは2回裏。先頭打者の大谷がカウント2-2から5球目の変化球を右翼スタンドへ本塁打を放つ。注目校同士の一番は大谷の本塁打が号砲となったのだ。大谷がダイヤモンドを一周している間、心なしか藤浪が笑顔だったのが印象的だった。
試合は2対0と花巻東リードで進むが、6回表に大阪桐蔭が3対2と逆転。その後も大阪桐蔭は7回、9回に追加点を挙げ、大谷をノックアウトして勝利。「打者大谷」は藤浪から本塁打を放ったが、「投手大谷」は11四死球と大荒れ。藤浪に投げ負けてしまった。
藤浪は大谷を倒し、春夏連覇へ向けてスタートを切ったのだ。
2013年の第85回大会は節目の記念大会ということもあり、出場校が従来の32校から4校増えた36校となった。そのため、夏の甲子園と同じく初戦ではあるものの、2回戦から登場となるチームも出ている。ここではこの2回戦も初戦ということで、紹介したい。
この大会で初戦となる2回戦で好勝負となったのが安樂智大(楽天)擁する済美と広陵の一戦だ。安樂は広陵打線を封じ3対0のまま試合は9回表を迎える。前評判通りの好投で安樂が完封するかと思われたが、広陵が意地を見せ同点に追いつく。
試合は延長13回裏に済美がサヨナラ勝ちを収めた。しかし、あと一歩のところで完封勝ちを逃した代償は大きく、安樂の球数は232球にまで達する。
済美は準優勝に終わるが、決勝戦の途中で降板するまで1人で投げぬいてきた安樂の投球数は772球。右ヒジを故障した安楽はこの年の秋からしばらくの間、ノースロー調整を余儀なくされてしまう。また、安楽の投球過多は問題視され、球数に関する議論が活発に交わされるようになった。
2014年の第86回大会で1人の怪物スラッガーが登場した。大会4日目に智辯学園の岡本和真(巨人)が三重を相手に1試合2本塁打を放ったのだ。1本目は、甲子園初打席となった初回2死走者なしの場面。フルカウントから高めのストレートをバックスクリーンへ文句なしの本塁打。高校通算58本塁打目だった。
2本目は4対1で迎えた6回表。先頭打者で迎えた岡本はボール先行のカウント2-0から左翼スタンドへ放り込む。まさにアーチストという弧を描いた見事なアーチだった。
この2本の本塁打も後押しして、智辯学園は7対2で三重を下し初戦突破。この試合で岡本は3番に入っていたが、後ろを打っていたのが1学年下の廣岡大志(ヤクルト)だ。廣岡も4打数2安打と勝利に貢献。廣岡が次に控えているため、三重バッテリーは岡本を簡単に歩かせることができなかった。
2015年の第87回大会の1回戦では、2014年のセンバツ優勝校の龍谷大平安と2013年の優勝校・浦和学院が激突。1回戦屈指の好カードとして注目を浴びた。
試合は、龍谷大平安の高橋奎二(ヤクルト)と浦和学院の江口奨理という大会屈指の両投手の好投で投手戦に。両チームともにチャンスを作ることができず0対0のまま延長戦へ入る。
均衡を破ったのは浦和学院。延長11回表に高橋をついにとらえた。浦和学院打線は四球で走者を出すと、犠打で1死二塁のチャンスを作る。2死後にヒットエンドランから三遊間を破るタイムリーヒットを放ち1対0。さらにタイムリー二塁打が飛び出し2対0とリードを広げる。
2点をもらった浦和学院の江口は11回裏、先頭打者を四球で歩かせたものの併殺で切り抜け、見事に完封勝利。優勝校対決の接戦を制した。
文=勝田 聡(かつた さとし)