相手チームを無安打に抑え、しかも得点を許さないというノーヒットノーラン。地方大会で、各チームの実力にバラつきがある状況も考えられるとはいえ、絶賛されるべき投手の勲章であることには変わりない。
2016年の夏の甲子園を目指す戦いの中でも、そんな快投が見られた。
筑紫と大牟田北の対戦は、2対0で筑紫が勝利。筑紫の2年生エース・渡辺雄大は、許した出塁は1四球のみといういわゆる「準完全試合」でノーヒットノーランを達成した。奪った三振は3個ながら、9回まで大牟田北打線をうまくかわす好投だった。
しかし、続く2回戦では、福岡舞鶴相手に7回を投げ被安打12、6失点と打ち込まれた渡辺。同校の甲子園初出場の夢は潰えてしまった。
東京学館浦安の黒田航平が、敬愛学園を相手に緩い変化球を効果的に使う巧みなピッチング。2四球に4失策とランナーを出しつつも要所を抑える快投を見せ、チームは6対0で勝利を収めた。
試合終了直後は、6回2死からの三塁ゴロが内野安打の判定で「1安打完封」かと思われたが、約30分が経過して、この一打の公式記録が安打から失策に。これにより、ノーヒットノーランが成立するという珍しいケースだった。
勢いに乗って次戦も5対0で千葉敬愛を下し5回戦を突破した東京学館浦安。しかし、準々決勝の習志野戦では、7回終了時点で3対1とリードしながらも、5回途中からマウンドに上がった黒田が8回表に1点、9回表に2点を許し3対4の逆転負け。ベスト8で夏が終わった。
角館のエース・小木田敦也が、最速147キロのストレートに加えて、スライダーや70キロ台のスローカーブを織り交ぜる緩急自在の投球で、能代松陽打線を翻弄。1四球2失策と出塁は許すも得点は与えずノーヒットノーランを達成、1対0でチームの勝利に貢献した。
続く準決勝も能代工を7対0で破ったが、決勝では大曲工に7対8で惜敗。2014年以来2度目の甲子園出場は果たせなかった。
3年生の小木田は、1年の夏にチームが甲子園に出場したときには、1年生ながら6番・サードでスタメン起用されていたほどの好素材。その後、投手に転向している。今後は、社会人野球に進む予定とのことで、さらなるレベルアップが期待される。
文=藤山剣(ふじやま・けん)