メジャーリーガーの出場がない今大会にあって、日本の最大のライバルとなるのは韓国に違いない。強豪ぞろいのグループAにあって、この国との開幕戦を落とすようなことになれば、その後の予選リーグも苦戦するだろう。
国内プロリーグは、WBC開始以降、人気・実力とも着実にレベルアップしている。環境面でも新球場が次々と建設され、今やメジャーリーグ、NPBに次ぐ世界第3のプロリーグと言って過言ではないだろう(写真はソウル・チャムシル球場)。
選手の育成については、アマチュアは少数精鋭のエリートをスパルタ式で鍛え上げるという方法を採っており、競技人口に比してそのレベルは高い。とくにフィジカル面においては、日本を上回るものがある。
学卒後の競技の場の少なさが指摘されていたが、現在ではプロに育成選手制度が設けられた。兵役中で軍や警察のチームでプレーする選手を合わせると、各球団100名前後の選手を抱えることが可能になり、志半ばで現役を終えてしまう選手をすくえるようになった。
投手陣の柱は、今年も14勝を挙げ、3年連続2ケタ勝利を続けている金廣鉉(キム・グァンヒョン/SK)になるだろう。2008年北京五輪、翌年のWBCのメンバーにも入るなど、国際経験も豊富。2007年のアジアシリーズでは中日相手に快投を演じ、大会史上初めて日本チームに黒星をつけるなど、侍ジャパンの前に立ちはだかることは間違いない。
なによりも気をつけなければならないのは打撃陣だ。おそらく4番には日本野球を熟知した李大浩(ソフトバンク)が座るだろう。日本シリーズMVPを手土産に、来季のメジャー挑戦も宣言。この打者をしっかり抑えることが日本の初戦突破につながる。
また、朴炳鎬(パク・ビョンホ/ネクセン)は2年連続50本塁打以上を記録し、4年連続本塁打王と打点王を獲得した韓国球界の新しい大砲だ。李大浩ばかりに気を向けると、手痛い一発を浴びるかもしれない。ただ、三振数も多く、攻めどころがないわけではない。
文=阿佐智(あさ・さとし)
1970年生まれ。世界放浪と野球観戦を生業とするライター。「週刊ベースボール」、「読む野球」、「スポーツナビ」などに寄稿。野球記事以外の仕事も希望しているが、なぜかお声がかからない。一発当てようと、現在出版のあてのない新刊を執筆中。ブログ「阿佐智のアサスポ・ワールドベースボール」(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041)