夏の甲子園も本番。どこが深紅の優勝旗をつかむのか。今夏は特に予想困難の大混戦だが、大胆予想してみたい。
■本命
明石商(兵庫)
2年連続2度目の夏。今春のセンバツではベスト4に入り、ポテンシャルを証明したが、兵庫大会での戦いぶりはあまりにも強かった。
準々決勝の姫路南戦では、プロ注目の左腕・照峰賢也を攻め立て、終盤に4点ビハインドを楽々とひっくり返した。さらに決勝・神戸国際大付との頂上決戦では、1点ビハインドの9回表に4点を奪って大逆転勝利。兵庫の覇権を握ったといっても過言ではない。
世代最強の呼び声高い2年生エース・中森俊介も伸びている。特にストレートは重さがある。さらに左サイドの杉戸理斗も兵庫大会では、チームトップの24回1/3を投げ、5失点の安定感。本格派の中森と変則の杉戸で目先も変わる。
この2人だけで強豪相手でも接戦への見込みが立つが、1回戦で三田学園を完封した溝尾海陸、さらには不調で兵庫大会ではベンチ外だった宮口大輝もメンバーに戻ってきた。打線も1番・来田涼斗を筆頭に“厚み”がある。
その上、狭間善徳監督の「カン」が冴えている。決勝戦の9回逆転は代打・窪田康太の死球からはじまったが、優勝監督インタビューで狭間監督は「左の井上(隼斗)でいこうとしたんですが、これちょっと(相手投手が)疲れているので、デッドボールあるかもしれないなと思って」と語った。データ野球で知られる狭間監督だが、この言葉が本当ならば、勝負師のアンテナもピンと張っている状態だ。
投打の充実、逆転の根性、監督のカン。条件は揃っている。
■対抗1
履正社(大阪)
大阪桐蔭が不調にあえぎ、中堅が水を得た魚となった大阪大会。しかし、最後で「2強」の意地を見せたのは、履正社だった。確かに履正社も春の近畿大会を逃し、不安視されていたのだが、大会で課題がどんどん解決していった。
まずは4番・井上広大の復調だ。春のセンバツから悩みが感じられたが、この夏は迷いを振り切る4本塁打(準々決勝から3試合連続を含む)。3番・小深田大地、5番・内倉一冴とともにクリーンアップで7試合32打点。中軸の迫力はナンバーワンだ。センバツでは星稜・奥川恭伸に17奪三振を喫した「大振り」は心配だが、並みの投手や疲労蓄積状態では持ちこたえられないだろう。
エース左腕・清水大成も波を克服し、安定感を身につけた。大会屈指のサウスポーといえる。バックアップでは2年生右腕の岩崎峻典が急成長。多彩な変化球を武器に大阪大会ではダブルエース級の活躍を見せた。
■対抗2
東海大相模(神奈川)
今年も地獄のような酷暑。投手陣は間違いなく悲鳴を上げるだろう。そんななか、気候を味方につけそうなのは東海大相模だ。なんといっても打線が強力すぎる。神奈川大会でも7試合中5試合で2ケタ得点。決勝では日大藤沢を24対1のスコアで圧倒した。
投手陣はおそらく大会ナンバーワンの選手層。左の諸隈惟大、冨重英二郎、野口裕斗、石田隼都、右の紫藤大輝がそれぞれ3試合に登板しており、継投で酷暑を乗り越える。勝ち進めば、球数問題に関する「世論」の追い風を受ける可能性もあるかもしれない。
ただし、初戦の近江戦がヤマ。近江の左腕エース・林優樹を気分よく打ち崩し、昨夏からのメンバーが多く残る近江打線を投手陣が抑えきり、波に乗りたい。
■対抗3
星稜(石川)
当然、大会ナンバーワン右腕・奥川恭伸を擁する星稜も優勝候補の一角になるだろう。奥川が注目を集めるが、左の寺沢孝多、2年生では右の寺西成輝、荻原吟哉も好投手だ。
打線も5試合で11本塁打を放った。しかし、「相手なり」の接戦になってしまうクセがあり、チーム打率.309はやや気になるところ。奥川をある程度、温存しながら終盤まで駒を進めることができれば、評価は限りなく本命に近づいていくだろう。
文=落合初春(おちあい・もとはる)