日本では“記憶に残る”程度の投手のバッティングだが、実はメジャー(ナ・リーグ)では記録として賞が設定されている。
それがシルバースラッガー賞だ。各ポジションにおいて、最も打撃が優れた選手を各チームの監督・コーチの投票によって決める。いわばポジション別の打撃王を決める賞で、もちろん投手部門もある。
アメリカの気の早いメディアやドジャースファンはすでに「今年のシルバースラッガー賞はマエダだ」と騒ぎ始めているという…!
PL学園高時代には4番を打ち、日本でも打てる投手の一人だった前田。彼がこの賞を受賞するためにはどれだけの成績を残す必要があるのか。ここ10年の受賞者の成績を見てみよう。(所属は当時)
≪2006年≫
カルロス・ザンブラーノ(カブス)
打率.151/6本塁打/11打点
≪2007年≫
マイカ・オーウィングス(ダイヤモンドバックス)
打率.333/4本塁打/15打点
≪2008年≫
カルロス・ザンブラーノ(カブス)
打率.337/4本塁打/14打点
≪2009年≫
カルロス・ザンブラーノ(カブス)
打率.217/4本塁打/11打点
≪2010年≫
ヨバニ・ガヤルド(ブルワーズ)
打率.254/4本塁打/10打点
≪2011年≫
ダニエル・ハドソン(ダイヤモンドバックス)
打率.277/1本塁打/14打点
≪2012年≫
スティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ)
打率.277/1本塁打/7打点
≪2013年≫
ザック・グレインキー(ドジャース)
打率.328/ 0本塁打/4打点
≪2014年≫
マディソン・バムガーナー(ジャイアンツ)
打率.258/4本塁打/15打点
≪2015年≫
マディソン・バムガーナー(ジャイアンツ)
打率.247/5本塁打/9打点
こう並べてみると壮観。年間100打席未満の投手とはとても思えない打撃成績が並んでいる。ちなみにマエケンの日本時代のキャリアハイは昨年の≪打率.194/1本塁打/5打点≫ の成績だった。
シルバースラッガーの数字と比べると、さすがに厳しいかと思われるが、まさかの一発大化けもあり得る…と希望を持っておきたい。ある程度、警戒され、不文律も厳しかった日本時代よりかは芽もあるはずだ。
そしてライバルとなりそうなのが、目下、2年連続でシルバースラッガー投手の座に就いているバムガーナーだ。昨年は81打席で5本、一昨年は78打席で4本をかっ飛ばした男。左投右打の珍しさもマニア心をくすぐる。
絶好のスタートを切ったマエケンだが、実はバムガーナーも4月10日にすでに1本塁打を放っている(しかも打順は8番!)。ドジャースとジャイアンツは同じ西地区。同じ先発投手として、2人の対決からは目が離せないものになりそうだ。
文=落合初春(おちあい・もとはる)