ラミレス監督のシーズン前の構想は、「梶谷は2番に定着させる」というものだった。俊足と攻撃のバリエーションの豊富さからすれば当然の考え方である。しかし5月終盤で梶谷は3番に落ち着き、ラミレス監督も5月下旬に入って「梶谷にはもっと自由に打たせたい」とコメントしている。振り返ってみれば2番での打率は1割台、3番での打率は.276をマークし、長打を視野に入れたバッティングスタイルが成績を残していることがわかる。
そもそもここ数年の梶谷は、阪神の金本知憲監督がトレーニングを積んだ「アスリート」で自主トレを行い、自らに肉体改造を施している。これにより打球はより強く、遠くに飛ぶようになり、梶谷本人としても、より長打を意識した打撃スタイルにシフトしていたに違いない。
しかしより長打のイメージを持つことによって三振も増加し、現時点で出場試合が倍ほどのホセ・ロペスと同数の25三振を喫するという弊害もある。
梶谷の高校時代の恩師である元開星高校監督・野々村直通氏は、そのルックスや言動から「やくざ監督』として有名だが、その野々村氏をして「他人のアドバイスを聞き流すところがある」と言わしめたマイペースなパーソナリティーだ。信念の強さは折り紙つきで、自分の世界を持って求道的にバッティングに向き合うタイプと言えるだろう。関連はないが梶谷は開星高校に学業の特待生として入学しており、その点も野々村氏は高く評価していた。
梶谷は日本球界のなかでもスピードとパワー、テクニックを兼ね備える稀有な選手であり、今後大きな故障などなければ、必ず球史に残る記録を残すことができる選手である。現在の投手陣の頑張りに加え、梶谷のトリプルスリーが実現されれば、DeNAにCS(クライマックスシリーズ)出場をもたらすことができるに違いない。
文=元井靖行(もとい・やすゆき)