「非常に現実的な指名」
「ワクワクしない人選」
巨人の今年のドラフトを振り返って、耳にする言葉がこれだ。
原辰徳監督の退任会見が行われたのが10月19日。その翌日に監督就任の打診を受けたという高橋由伸は、23日にこれを受諾。ドラフト会議の22日は、来季の巨人にとって最も重要な人事が、目まぐるしく渦巻いていた日でもあった。
今年の巨人の指名選手たちは、前監督の意向が汲み取られたのか、今では謎のままである。一連の騒動をふまえると、やはり編成部主体で指名選手が決まった可能性は高い。
結果は冒頭に記したように、現実的な指名がズラリ。オコエ瑠偉(関東一高)や高橋純平(県岐阜商)、甲子園優勝投手の小笠原慎之介(東海大相模高)らには目もくれず、ロマンを求めずに堅実なドラフトになった感は否めない。
そんなドラフトで、巨人から2位で指名されたのが重信慎之介(しげのぶ・しんのすけ)だ。
4年秋のリーグ戦では、打率.432で首位打者に輝いた重信。放った16安打のうち、本塁打1本、三塁打、二塁打ともに2本と、パンチ力もあることは実証済みだ。
俊足巧打で広角に打ち分け、長打もある外野手。同じ早稲田大学出身で、青木が大学4年時に背にした背番号24をつけて活躍した重信を「青木宣親2世」と呼んでも、なんら不思議はないだろう。
実際、同じ早大時代の成績は、似通っている。
青木宣親
58試合/打率.332/本塁打0/打点25/盗塁31
重信慎之介
83試合/打率.333/本塁打2/打点22/盗塁39
青木のプロ入り後の活躍はご存じの通り。早大卒業後は、プロ2年目にいきなり首位打者を獲得。翌年には2ケタ本塁打と盗塁王を記録してヤクルトの中心選手に成長。さらに海を渡ってメジャーリーガーとなり、その”凄み”はより一層、磨かれた。
奇しくも、東京六大学の首位打者が巨人に入団するのは、高橋由伸新監督以来となる。
原辰徳前監督は、退任会見で「この3年ほどチーム力が低下している」と語った。その言葉通り、投手陣では内海哲也や杉内俊哉、野手では阿部慎之助や村田修一ら、「ジャイアンツ愛」を演出してきた選手たちの衰えは隠せない。
今季のヤクルトに代表されるように、若い力がグングンと芽吹いているセ・リーグ。戦力低下が著しい巨人・高橋由伸新監督には、イバラの道が待っているだろう。
さらに青天の霹靂ともいえる人事が発動。賭博問題もあり、現実的なドラフトになったことは、これから先も「負のドラフト」として語り継がれるかもしれない。
だからこそ、激動のシーズンとなった巨人のドラフトで指名された選手として、重信には名を馳せて欲しいと思う。5年後、10年後になるか分からないが、「あの年のドラフトには重信がいた」と語り継がれるような、立派な選手になって欲しいのだ。
急遽、現役引退となった新監督の意志をも継いで、東京ドームの外野で大暴れする重信。ファンの期待を受けて、重信は一日も早い1軍デビューを目指す。
文=野球太郎編集部