黄金時代を迎えた広島の中心選手として引っ張り続けている丸佳浩が、今シーズン中に国内FA権を取得した。それに伴い広島の松田元オーナーは引き留めの準備があることを明言。シーズン中ということもあり。もちろん本人はFA権の行使に関するコメントを残していない。
もし、丸がFA権を行使したら広島と、丸を受け入れるチームどのような状況になるのだろうか。考察してみたい。
丸は2007年高校生ドラフト3巡目で広島に入団。3年目の2010年に1軍デビューを果たすと、翌2011年からはレギュラーに定着。2013年に初めてのタイトルとなる最多盗塁を獲得すると一気に頭角を現し、2014年には初めて打率3割を記録する。
その後も着実に成長し、昨シーズンは打率.308、23本塁打、13盗塁の好成績でセ・リーグのMVPを受賞した。
今シーズンは1カ月ほどの離脱があったものの、ここまで打率.317、37本塁打、91打点と文句なしの成績で2年連続となるMVPの最有力候補となっている。
守備も安定感があり2013年からは5年連続でゴールデン・グラブ賞も受賞。また、まさに走攻守そろった超一流のプレーヤーだ。
丸は中田翔(日本ハム)や菅野智之(巨人)らと同じ1989年生まれ世代。来シーズンは30歳になるが、まだまだ主力として活躍できる年齢は大きな強みだ。また、選球眼がよく四球を多く選べる点もアピールポイントだろう。
■丸佳浩の今シーズン成績
115試合/打率.317/37本/91打点/10盗塁/121四球
(成績は9月24日現在)
ここから丸がFA移籍した場合を考察してみる。広島の外野陣を見渡すと、守備に関しては中堅の丸が抜けたとしても大きく崩壊することはなさそうだ。
右翼に鈴木誠也、中堅には今シーズンに入りブレイクした野間峻祥、左翼には松山竜平やバティスタが控えている。左翼の守備に不安は残るが、これまでに2人は多くの試合で守っており、大きな不安要素にはならないだろう。
それよりも打線へ与える影響の方が大きい。今シーズンは、ほぼ丸が3番、鈴木が4番でスタメンを組んできた。球界を代表する2人が連続して打席に入ることで相手投手はどちらかと勝負せねばならず、その結果、2人で多くの得点を生んできた。
バティスタに松山と打撃に期待できる選手はいるものの、MVP級の活躍を誇る丸には及ばない。そのため鈴木へのマークがより一層、厳しくなることは自明の理だ。丸の不在で、より鈴木の真価が問われることになるだろう。
丸が移籍市場に出てくるとなると、多くの球団が興味を示すはずだ。セ・リーグでは、中堅を固定できず苦しんでいる巨人と阪神は興味を示すだろう。
丸を獲得することで戦力アップに加え、近年圧倒的な強さを誇る広島の戦力を削ぐこともでき、一石二鳥だ。もちろん、金銭だけでなく人的補償で選手を失うことも考えられるが、プロテクトリストから漏れる選手で丸以上の選手は不在。勝負に出てもおかしくない。
パ・リーグでは故郷である千葉に本拠地を置くロッテ。中堅はケガで離脱した荻野貴司やトレードで獲得した岡大海がいる。しかし、こちらも総合力では丸には及ばない。
本拠地・ZOZOマリンスタジアムは来シーズンから外野が狭くなることもあり、本塁打が生まれやすくなる。そのなかで目玉として丸を獲得すれば話題性は十分だ。出戻りのサブローを除き、ロッテが野手をFAで獲得するケースはこれまでないが、はたして丸獲得に動くだろうか。
また、丸にはポスティング申請の可能性もある。メジャーのスカウトが広島の試合を視察に来たという報道もあり、水面下では丸獲得を視野に動いていることもありえる。これまでに表だってメジャー志望を口に出したことはないが、丸が希望すれば認められる可能性はありそうだ。
日本シリーズ終了までは丸の口からFAに関する具体的な発言はないかもしれないが、球界の戦力図を一変させる力をもっているだけに、その動向には注目が集まる。
文=勝田聡(かつた・さとし)