春季大会の大トリとなったのは東北大会決勝・仙台育英高対八戸学院光星高の一戦。甲子園常連校同士の注目カードは、仙台育英高の左腕エース・長谷川拓帆(3年)が5安打完封の力投。1対0で仙台育英高に軍配が上がった。
この2チームは、昨秋の東北大会の準々決勝でも対戦し、そのときも仙台育英高が6対0で勝利。仙台育英高は八戸学院光星高に連勝して、夏への勢いをつけた形だ。
一方の八戸学院光星高は、秋に続いての完封負け。しかし、仙台育英打線を1点に抑えたことは収穫。手応えを感じたのではないだろうか。
2011年の夏から2012年の夏にかけて、八戸学院光星高は甲子園で3季連続準優勝を果たした。しかし、今春は東北大会出場をかけた青森県大会で3位。近年は「強いけど、もう一歩」いう戦いが続いているだけに、この春を糧にブレイクしたい。
また、仙台育英高は2015年夏には甲子園準優勝と「夏の頂点」の目前まで迫った。東北の両雄は今夏の甲子園で、東北初の優勝旗をつかめるか。
続いては、高校通算本塁打ランキング1位へ向けて、進撃が止まらない清宮幸太郎(早稲田実、3年)の情報を。
6月18日、香川で行われた招待試合の丸亀城西戦では4回に102号、6回に103号を放ち、歴代記録の107本塁打を更新するまであと5本。偉業のカウントダウンは片手の指に収まるところまで進んだ。
この試合は9回に巡ってきたサヨナラのチャンスで凡退し、早稲田実は9対10で敗れたが、そこで運を使わずによかったと思えるような打撃を、次戦で披露してほしい。
清宮の話題で埋め尽くされているが、2年生ながら早稲田実の4番に座る野村大樹の実力は誰もが認めるところ。丸亀城西戦でも一発を放って高校通算本塁打を40本に乗せた。
身長は172センチと小柄だが、U-15日本代表でクリーンアップを務めた将来有望なスラッガー。早稲田実でも1年夏から公式戦に出場し、順調な成長曲線を描いている。
また、打撃だけでなくマルチに守れる守備能力も売りで、メインの三塁のほか、捕手や投手としても出場。いざというときに頼りになる存在だ。
各地で夏の選手権大会の抽選が行われるなか、一足先に開幕した沖縄大会。
初日の6月18日には、ドラフト候補の150キロ右腕・平良海馬(八重山商工高、3年)が登場。10球団のスカウトが見守るなかでの投球となったが、暴投で献上した1点を返すことができず、0対1で首里高に敗退。2006年以来の甲子園出場は今年も叶わなかった。
しかし、151キロを2度記録した力投にスカウトの評価は上々。平良の短い夏は終わったが、秋のドラフトではプロ入り果たしたい。
また、1991年夏、1992年夏の甲子園で2年連続準優勝し、新垣渚(元ソフトバンクなど)らを輩出した沖縄水産高は八重山高に1対9で敗退。
両校のように過去に甲子園で実績を上げたチームでも、なかなか勝つことができない沖縄。実力校がそろうだけに、これから登場するシード校も油断はできない。
その沖縄にあって注目したいのは美来工科高。昨年の秋季沖縄県大会で優勝し、今年の春季沖縄県大会でも準優勝とメキメキと力をつけている。チームを率いるのは2010年に嘉手納高をセンバツ初出場に導いた真玉橋元博監督。
美来工科高の1979年夏以来の甲子園出場はなるか。名将の腕の見せどころだ。
6月17日、愛知大会の組み合わせ抽選会が行われた。
今年のセンバツに出場した至学館高は、女子マネージャーの寺沢ありすさん(3年)が春夏連続出場の願いを込めてクジを引き、初戦が7月16日に決まった。(西春高対瀬戸高の勝者と対戦)。
また、先日の招待試合で、清宮から高校通算100号のメモリアルアーチを打たれた享栄高は、7月1日に起工高との対戦が決定。
クジを引いた捕手の池本風輝(3年)は、試合では5対1で早稲田実に快勝したにも関わらず取材されなかったことに不満だったようで、「甲子園に出て注目度を逆にしたい」と鼻息を荒くしていた。
享栄高が愛知を勝ち抜けば2000年のセンバツ以来17年ぶりの甲子園出場。かつては3年から5年に1度のペースで甲子園に出場していた時期もある名門だけに、再び歴史の扉をこじ開けてほしい。
激戦区・神奈川のダークホースとして注目される星槎国際湘南高は、創部初第1シードで神奈川大会に臨むことが決まった。
6月15日の日大三高との練習試合では、チームの中心を担うエースの本田仁海が17安打9失点と打ち込まれ敗戦。プロ11球団のスカウトがかけつけたなかでの乱調に「神奈川大会に暗雲……」ともとれるが、9回には3者連続三振を奪うなど実力の片鱗もしっかり発揮した。
本田自身も「いい経験」と語り、土屋恵三郎監督も「打たれながら覚えよう」とアドバイス。神奈川大会まで時間はないが、しっかり調整して大会での快投に期待したい。
9月1日から9月11日に、カナダで開催される「第28回WBSC U-18ベースボールワールドカップ」の第1次候補選手30人が発表された。
清宮はもちろん、センバツの優勝投手・徳山壮磨(大阪桐蔭高)ら3年生のドラフト候補がリストアップされるなか、小園海斗(報徳学園高)ら3人の2年生も選ばれた。
最終メンバーの20人は、夏の甲子園終了後に決定。「自分なら彼を選ぶ」という視点で各地の大会や甲子園を追っていくのも面白いだろう。
この大会は2年に1度行われており、前身の「AAA世界野球選手権大会」「18U野球ワールドカップ」を含めてアメリカが3連覇中。そのうち2回は日本が敗れており、今回こそ一矢報いたいところだ。
打つたびに注目度が上がっていく清宮。当然といえば当然だが、試合に勝ったときも負けたときも「打ちました」と同じように報道されるのには、少々疑問を感じる。
その疑問に切り込んだ享栄高の池本は、とても面白い選手だと思った。もちろん練習試合や招待試合での早稲田実との勝敗に世間の目が向かないのは、清宮のせいではない。清宮にしてみれば「そんなことを言われても……」という気持ちだろうが、池本のようにライバル心を燃やす対立構造はあっていいと思う。
高校野球は教育の一環でもあるが、プレーしているのは多感な年齢の高校生。こんな経験はなかなかできることではないので、そのエネルギーを夏の大会にぶつけ、甲子園で清宮と対戦となったときは多いに活躍してメディアや世間を振り向かせてほしい。
(成績、結果は6月19日現在)
文=森田真悟(もりた・しんご)