先週も中村奨成を紹介したが、その時点での本塁打数は3本。まさか1大会6本塁打を放ち、甲子園記録を塗り替えるとは正直思っていなかった。甲子園のスターから甲子園のレジェンドに成長を遂げたからには再検討が必要だろう。
まず修正したいのは守備能力。大会を通じて「爆肩」をコンスタントに披露し、送球のたびに甲子園が沸いた。三振に斬ったあとのボール回しを見ても完全にプロ級。「打てる捕手」として育てていく球団を現実的にサーチしたい。
甲子園のレジェンドに食いつきそうなのはヤクルトやロッテ。しかし、両球団ともに高卒捕手を獲得している余裕はない。あるとすれば、新監督の鶴の一声で「変革の目玉」にするパターンだ。
残念ながら厳しいと感じるのは巨人。先週は「小林誠司との広陵・先輩後輩対決もいいかも」と書いたが、それでは広陵サイドがいい顔をしないだろう。巨人はそのあたりのバランス感覚に優れている印象がある。
地元・広島もハテナマークだ。カープには「広島出身の県内高卒選手は獲得しない」という不文律があると言われており、2003年に広陵からドラフト1位で入団した白濱裕太も出身は大阪だった。広陵はお膝元だが、カープが思い切って舵を切るのかにも注目したい。
高卒捕手を指名する余裕という点ではやはりソフトバンクだ。近年は高校生中心の指名を進めており、今年はドラフト候補の投手の多くが進学を表明。昨年、九鬼隆平を獲得しているが、求め続ける「ポスト城島」を逃す手はないだろう。
「その年のナンバーワン選手」を1位指名する方針の日本ハム、高卒スターに目がない楽天も動きそうな予感。
出場機会の面では、我慢上手の栗山英樹監督とドラスティックな世代交代が噛み合った日本ハムがよさそうだ。
どこが指名してもおかしくないが、清宮幸太郎(早稲田実)がプロ志望届を出すか否かで情勢は大きく変わるだろう。
真紅の優勝旗を手にした花咲徳栄のエース・清水達也もドラフト候補に名乗りを上げた。技巧派が目立った今大会だが、唯一の150キロを記録。三振が取れるフォークが武器でリリーフでも抜群の安定感。独特のアーム投法で変則派の一面もあり、クセは強いが育てば守護神になれる逸材だ。
暴れる球、球威を育てきれるには“ふところ”が必要だ。清水のような馬力タイプが好きな球団はロッテ、オリックス、日本ハムあたり。中日もリリーフ陣にてこ入れが必要で、あえて力投タイプを加える可能性もある。
オススメしたいのはオリックス。吉田凌、山本由伸など、一癖ある高卒投手たちが次々と2軍で結果を残している。
少し気は早いが来年の高校野球シーンを思い描きたい。目玉になりそうなのは東西の“二刀流”候補だ。
東は横浜・万波中正。コンゴ共和国出身の父を持ち、190センチ89キロのボディから爆発的な打球を生み出す。投げても最速146キロを記録し、粗削りながらパワフルな投打は可能性の塊だ。
西は大阪桐蔭・根尾昂。自己最速148キロ、超高校級のパワーはすでに別格。投打に絞りきれない可能性があり、こちらも二刀流が目指せる。大谷翔平(日本ハム)のメジャー移籍も迫っており、新たな二刀流選手へのニーズが高まりそうな背景もある。
強打者では野村大樹(早稲田実)、野村佑希(花咲徳栄)の「W野村」に注目したい。投手はまだ150キロ台はいないが、一冬越えれば到達しそうな140キロ台後半の投手がゴロゴロいる。
早くも「ミレニアム世代」のキャッチフレーズがメディアに踊るようになった高校2年生たち。豊作への期待が高まる。
文=落合初春(おちあい・もとはる)