埼玉生まれ埼玉育ちの筆者としては、迷うことなく花咲徳栄を優勝候補に推す。昨年のセンバツは1回戦で敗退してしまったが、夏の甲子園は3年連続の出場で、ここ2年はいずれも2勝と奮闘中。例年、夏に向けて完成度を一気に高めており、大いに期待できる。
また、昨年は広島にドラフト2位で入団したエース・高橋昂也を擁していたが、今年のチームには最速149キロ右腕の清水達也、バツグンのミートセンスを誇る西川愛也、将来性豊かな右のスラッガー・野村佑希と投打に超高校級の選手が揃っている点も見逃せない。
センバツ王者・大阪桐蔭を筆頭に一筋縄ではいかない強豪が揃っているが、今夏は花咲徳栄が埼玉勢初の夏の甲子園優勝という大輪の花を咲かせる!
対抗には春夏連覇を目指す大阪桐蔭を「優勝に限りなく近い対抗」として挙げたい。夏の甲子園は3年ぶりの出場となるが、過去10年の夏の成績を見ると出場4回で優勝3回(2008年、2012年、2014年)。恐ろしいまでの優勝確率を誇っており、順調なら春夏連覇は間違いないだろう。
その強さを裏づけるのがドラフト候補選手の多さ。コーナーに投げ抜くコントロールが売りのエース・徳山壮磨、マルチに守れる多刀流で話題の根尾昂、大阪大会の決勝戦で本塁打を放った藤原恭大と次々に名前が挙がる。
大阪大会決勝では公立校の大冠にあわやの苦戦を強いられただけに、このタレント軍団がふんどしを締め直して甲子園に乗り込んでくることは明らか。慢心のない王者が負けるとしたら……、史上初となる2度目の春夏連覇のプレッシャーに押しつぶされたときか。
まずは作新学院対大阪桐蔭を挙げたい。夏の甲子園連覇を狙うチームと春夏連覇を狙うチームの対戦は、まさに真のチャンピオンを決める戦いになるはず。勢いからすると大阪桐蔭に分があるように感じるが、決勝で見たいカードだ。
また盛岡大付対日本文理という、打撃を信条とするチーム同士の対戦も気になるところ。盛岡大付の「わんこそば打線」と日本文理の「バントをしない大井道夫野球」が、真正面からぶつかるとどんな化学反応を起こすのか。練習の約7割を打撃に充てる「現代の攻めダルマ」大井監督は今大会を最後に勇退が決まっている。最後の聖地で歴史に残る打ち合いを見せてほしい。
個人的に期待している選手として、まずは増田珠(横浜)を挙げたい。元々バットコントロールの巧みさと選球眼のよさを買われてドラフト候補に目されていたが、この神奈川大会では5回戦から決勝までの4試合連続で5本塁打を放ち、長打力があるところも見せつけた。今ノリにノッている打者だ。
昨年、1位指名で楽天に入団した横浜の先輩・藤平尚真に、「世代ナンバーワンの外野手になれ」と目をかけられていた選手。まさに、世代ナンバーワンへの階段を駆け上がっていくタイミングで甲子園を迎える。
もう1人は投手。一番乗りで甲子園出場を決めた興南の1年生左腕・宮城大弥に注目したい。2010年に興南が春夏連覇を達成したときのエース・島袋洋奨(現ソフトバンク)を思わせるトルネード風の投球フォームは、再び甲子園に興南旋風を起こす可能性をたっぷりと感じさせてくれる。
我喜屋優監督が沖縄大会の決勝を託した強心臓の1年生が、聖地の決勝で投げている姿も見たい。
文=森田真悟(もりた・しんご)