西武とのファーストステージをギリギリの戦いで制し、心身ともに充実した状態で臨んだ楽天に対し、中9日と試合間隔が開いていたソフトバンク。
ゲーム勘の差が出たか、楽天が先勝。これでソフトバンクの優勝アドバンテージは消えた。すなわち、レギュラーシーズン143試合でソフトバンクが楽天につけた15ゲーム差は、チャラになったことになる。加えて「初戦を落とすと100%敗退」というパ・リーグのジンクスも広く報じられていた。
続く2戦目も楽天が制し、星勘定では一歩リード。「日本シリーズはソフトバンクが行くべき」と大多数が思っていただろうが、流れは楽天に傾きつつあった。しかし、それを阻止したのが主将の内川聖一だった。
7月23日のロッテ戦では守備の際にファーストミットをはめた左手の親指を負傷した内川。「左手母指基節骨尺側基部剥離骨折」で全治6週間という診断が下された。そこから焦らずじっくり治療と調整。復帰したのは、約2カ月後の9月30日のオリックス戦だった。そこから、レギュラーシーズン4試合をこなして、CSに突入した。
そしてCSでは、史上初となる4試合連続本塁打でチームを牽引。負けた試合でも、4番として、主将として、役目を果たした。チームを鼓舞する効果は打点以上のものがあったのではないか。
終わってみれば、2連敗からの3連勝でソフトバンクがCS突破。内川は、5試合で18打数7安打、打率.389、4本塁打、7打点。CSのMVPに選出された。これは誰もが納得の受賞だろう。ちなみに、内川がCSでMVPに選ばれたのは2011年、2015年に続いて3回目だが、過去2回とも、ソフトバンクは日本一に輝いている。2015年は肋骨骨折により日本シリーズには出られなかったが、それでもチームは頂点に立った。これ以上の吉兆はないだろう。
今季終了時点での通算安打は1975本。通常営業でシーズンに入りさえすれば、来年の4月中には区切りの数字まで達する。また、通算200本塁打まであと24本、通算1000打点まではあと114打点。こちらも、来季中の到達が絶対無理という数字ではない。
チームの野手では鶴岡慎也、川崎宗則、高谷裕亮に次ぐ4番目の年長者(35歳)ではあるが、その打棒は、そしてチームへの情熱は、まだまだ衰える気配がない。
文=藤山剣(ふじやま・けん)