厄年の意味については諸説あり、その起源や科学的根拠がはっきりしないとされているものの、人知を超えた何かが存在するのが古くからの言い伝え。神社でお祓いをしてもらうなど、何らかのケアをしている人も多いのではないか。
厄年の対象年齢も各所によって多少のズレがあるが、男性は、数え年(生まれた年を1歳として、年が改まるごとに1歳加算)で25歳、41歳、61歳が「本厄」で、その前後1年を「前厄」、「後厄」とするケースが一般的だろう。
プロ野球の現役選手では、1977〜1979年、1994〜1996年生まれが厄年に該当する。主な選手をピックアップしたい。
「本厄」のなかでも、さらに用心すべきは数え41歳の年の「大厄」と言われている。現役選手のなかで、唯一該当するのが山井大介(中日、1978年5月10日生まれ)だ。
昨季、5月22日のDeNA戦では4安打無失点で9回を投げきり、史上9人目となる40代での完封勝利を達成。とくにロペス、筒香嘉智、宮崎敏郎のクリーンアップを11打数無安打と完璧に抑え込む好投を見せた。
ただ、シーズントータルでは3勝6敗。13勝5敗で最多勝と最高勝率の二冠を獲得した2014年以後は、中継ぎでの出番も増えたとはいえ4勝、1勝、2勝、3勝と、勝ち星を伸ばせていないのが現状だ。
そんなところに持ってきて「大厄」というのは難儀な話だが、生え抜きのベテランの活躍は、チームやファンに勇気を与える。投手では上原浩治(巨人)に次ぐ年長となる山井が、低迷するドラゴンズのカンフル剤となれるか。
他に、この年代の「前厄」は、阿部慎之助(巨人、1979年3月20日)、五十嵐亮太(ヤクルト、1979年5月28日)、能見篤史(阪神、1979年5月28日)、石原慶幸(広島、1979年9月7日)、「後厄」は福留孝介(阪神、1977年4月26日)がいる。
ソフトバンクを退団した五十嵐は、古巣のヤクルトに出戻った。昨季3億6000万あった年俸は、ゼロがひとつ減るどころではないダウンとなりそうで、それ自体が「前厄」の影響なのかもしれない。しかし、150キロ級の豪球は健在で、なにより日米通算860試合登板の経験がある。慣れ親しんだ神宮のマウンドで躍動するシーンに期待したい。
一方、数え年で25歳となる1995年生まれの「本厄」の選手は、各球団に多数在籍。ちなみに、1995年生まれは亥年の年男でもある。いい年なのか悪い年なのか、あとは本人の気の持ちようとなってきそうだが、そうも言っていられないのが松井裕樹(楽天、1995年10月30日)だ。
ルーキーイヤーの2014年はおもに先発、その次の2015年から2017年は抑え。昨季は、調子が上がらなかったこともあって、中継ぎだけでなく4年ぶりの先発マウンドにも立つなど、多くの役割を経験した。そんななかで、デビュー以来、各年の防御率は3.80、0.87、3.32、1.20、3.65。好不調を1年おきに繰り返している。
流れに沿えば今季は好調の年となるが、それが崩れて今季も不調が続くようだと「『本厄』だから…」となってしまうこと必至。さらに松井の場合は、昨年12月に女優の石橋杏奈と結婚。新婚の選手は、活躍しないと伴侶のせいにもされかねない。これらのプレッシャーを跳ね返して、2014年、2016年のようなハイレベルの成績を残せるかどうか、注目だ。
また、「前厄」、「後厄」の選手も多くいるが、そのなかでは「前厄」の岡本和真(巨人、1996年6月30日)が、G党ならずとも気になるところ。昨季は、史上最年少で「3割・30本・100打点」を記録するなど大ブレイク。今季が5年目となるが、本当の意味で名を売ったのは昨年からで、「2年目のジンクス」とも戦わなくてはならない。開幕からマークされることは間違いなく、それが「前厄」の年というのも楽ではないが、巨人の4番として確固たる地位を築くためにも、ここで立ち止まるわけにはいかない。
「後厄」の選手では藤浪晋太郎(阪神、1994年4月12日生まれ)を挙げておきたい。大阪桐蔭で甲子園春秋連覇、プロデビューから3年連続2ケタ勝利、最速160キロの速球など、誰もが認めるポテンシャルを秘めているが、ここ3年は思うような投球ができていない。
藤浪の場合は2017年が「前厄」、2018年が「本厄」、そして今季が「後厄」。もう、厄年の峠は越えつつある。昨季は終盤に3連勝をマークしており、9月22日のDeNA戦では2シーズンぶりに完封勝利も記録。全盛期のような投球が、今季は開幕から見られるかもしれない。
文=藤山剣(ふじやま・けん)