たとえば、金言を与えられた1人が辛島航だ。
辛島は看板球のチェンジアップを始め多彩な球種を投げわけ、打者を翻弄する技巧派タイプ。2014年には2ケタに迫る8勝をマークするなど、チームを代表する主戦級のサウスポーだが、ここ2年間は5勝、3勝にとどまっている。
伸び悩んでいる26歳の辛島に、細川は「研究されたことで、打者がチェンジアップに慣れてきた」と指摘。看板球に過度に依存しない配球の組み立てを助言している。
対外戦4試合で16回を投げて3失点。3年目の覚醒を予感させる好調な仕上がりの安樂智大。則本昂大、岸孝之に続く開幕ローテ入り濃厚の背番号20に、細川は「怪物流」の調整方法を伝授した。
西武時代にバッテリーを組んだ松坂大輔(ソフトバンク)が、投球フォームを整えるため、イニング間ではカーブを多投する投球練習をしていたエピソードを披露。投球の質のよさを追求する安樂に、新たな引き出しを与えたようだ。
「プチ則本」。投球フォームが似ているため、そう呼ばれることもある古川侑利は4年目の21歳だ。力強いストレートを持ちながらも1軍未勝利の右腕には、カーブを始めとした緩急を意識したピッチングをアドバイスした。
昨年オフ、古川はアジアウインターベースボールリーグ(AWB)に参戦。変化球を磨いた。細川の助言は、やってきたことを大きく後押しするものになったようだ。
3月5日のDeNA戦で、5回を投げて被安打7と多くのヒットを許しながらも1失点に抑えた背景には、走者を得点圏に置いた場面で、カーブを始めとした粘り強い変化球主体のピッチングがあったからだ。
そして、森雄大である。2012年のドラフト1位ながら、1軍での勝利は2014年に挙げた2勝のみ。伸び悩む大型左腕に対し、細川は効果的な球の曲がりをスライダーからカットボールにマイナーチューニングすることを勧めた。
3月12日の日本ハム戦では、この新球を操り5回1失点。特に岡大海ら右打者のインコースに投げ込んだカットボールが威力を発揮し、多くの空振りと見逃しストライクを奪うなど、新境地に踏み出す好投につながった。
チーム内で進行中の細川加入による金言波及効果。今シーズン、ベテラン捕手のアドバイスを受けた楽天選手がそれぞれ成長を見せれば、4年ぶりにAクラスへの扉が開くはずだ。
文=柴川友次
信州在住の楽天推しの野球好き。イーグルスに関するありとあらゆるデータの収集を標榜するデータマン&野球ブロガー。2,000人以上にフォローされているTwitterアカウントは@eagleshibakawa。