今年からファームの本拠地を神戸サブ球場から、大阪の舞洲サブ球場へ移転したオリックス。3月25日には、初のウエスタン・リーグ公式戦が行われた。舞洲には球場だけでなく、室内練習場や合宿所も新たに作られている。合宿所の名前は神戸のときと同じ「青濤館(せいとうかん)」を受け継いだ。
1軍の本拠地・京セラドーム大阪から距離が近くなり、行き来がしやすくなった。練習施設は24時間使用可能で、1軍の試合が終わった後でも舞洲で練習ができる環境にある。
舞洲サブ球場のスタンドは定員500人。神戸サブの一塁側、三塁側のスタンドがなくなって、バックネット裏の席だけになったイメージだ。こじんまりとしているが、ファンが一体となって応援することができる環境だ。
オリックスのファームの名物といえば、スタジアムDJのケチャップさんだ。
選手紹介のアナウンスはもちろんのこと、開門時に観客を迎えてハイタッチ、スタンドへあがって観客をあおり、グラウンドへ降りて選手にインタビューなどと、とにかく球場のあちこちに登場する。そして試合を盛り上げていくのだ。ケチャップさんがいるだけで、間違いなく試合が楽しくなる。
田口壮2軍監督が執筆した『プロ野球・二軍の謎』(幻冬舎)が発売された。プロ野球の2軍はどんな存在なのか。アメリカのマイナーリーグと日本の2軍の違い、2軍の試合の観戦ガイドなど、2軍についての様々なことが書かれている。これほど2軍について詳しく、面白く書かれた本はないのではないだろうか。
2軍の試合を見ていて、この選手はなぜ1軍に上がれないのか、2軍では好成績を挙げているのに、なぜ1軍で活躍できないのか、と思うことがある。その理由についても本書で明かされている。
また、監督就任1年目で、若い選手に対してどのように接したのか。また2軍のコーチとのどのようなやりとりが行われたのか。そういった記述も興味深い。2軍の選手の成長とともに、スタッフの動向も見守りたくなる。
田口2軍監督には、メジャーでの経験を生かした新しい指導を期待されているかもしれない。その一方で受け継がれた伝統がある。
それは、阪急ブレーブスからオリックス・ブレーブス、ブルーウェーブ、そしてバファローズとチーム名が変わりながらも受け継がれてきた外野守備の技術がそうだ。いかにボールに対して速く無駄なく動くか。鉄壁の外野陣の技術が伝統として守られているのだ。
2軍の試合の魅力は、選手との距離が近いこと。鳴り物の応援もなく、プレー中の音がよく聞こえる。投手や打者が力を入れた瞬間の声も聞こえてくる。ベンチからの声もよく聞こえる。これは1軍の試合では経験できない。
逆もまたしかりで、選手のいるグラウンドからは、観客席がよく見えるらしい。観客席からの声がダイレクトに届く。これから1軍へと羽ばたいていくだろう選手に、精一杯の声援を送ろうではないか。
文=矢上豊(やがみ・ゆたか)
関西在住の山本昌世代。初めてのプロ野球観戦は、今はなき大阪球場での南海対阪急戦と、生粋の関西パ・リーグ党。以来、阪急、オリックス一筋の熱狂的ファン。プロ野球のみならず、関西の大学、社会人などのアマチュア野球も年間を通じて観戦中。